現代語訳

・ある臣が君に申し上げた
 ・「タエマクエハヤという者は大力で、地金を延ばして角を割くカナユミを造るといいます」
 ・また、当人は『我が力に張り合える競い相手を求めているが、出てこないまま罷ってしまうか』と常に語っているそうです」
・その話を聞いた君は、諸人に「クエハヤに競える力を持つ者はおらぬか?」と問うた
 ・すると、その中から「ノミノスクネ※はどうでしょう」という申し出があった
・これ故にナガオイチを遣わして、その者を召した
 ・これにノミノスクネも喜べば、君は「明日に競わせよう」と詔した
・力を競うのに、カミノノリに則ってスマイノサトにハニワ(埴庭)を成した
 ・そして、タエマは東から、ノミは西から出でて立ち合えば、ノミが強く、クエハヤの脇を踏み、さらに腰を踏み殺した
 ・勝負が決まると君が団扇を上げてトヨマセば、臣も喜んだ
 ・勝負に勝ったノミは、クエハヤの金弓とタエマクニを賜った
 ・これを以ってノミの妻は「ツキナシの身はユミトリである」と言った

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用語解説

・ノミノスクネ:ウカツクヌの子で、アメノホヒ十四世の孫。『日本書紀』でいうノミノスクネに当たる

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原文(漢字読み下し)

・ある臣(とみ)君(きみ)に
・申(もふ)さくは 當麻(たえま)クエハヤ
・大力(おおちから) 地金(ちかね)お延(の)はし
・角(つの)お割(さ)く 金弓(かなゆみ)造(つく)り
・常(とこ)語(かた)り これお踏(ふ)み張(は)る
・我(わ)か力(ちから) 余(よ)に競(くら)へんと
・求(もと)むれと 無(な)くて罷(まか)るや
・ひた嘆(なけ)く

・君(きみ)諸(もろ)に問(と)ふ
・クエハヤに 競(くら)ふる力(ちから)
・あらんおや 申(もふ)さくノミの
・スクネなり ナガオイチして
・これお召(め)す ノミのスクネも
・喜(よろこ)へは 明日(あす)競(くら)へんと
・御言宣(みことのり)

・力(ちから)競(くら)ふる
・上(かみ)の法(のり) 争(すま)いの里(さと)に
・埴庭(はにわ)成(な)し タエマは東(き)より
・ノミは西(つ)に 合(あ)ひ立(た)ち踏(ふ)めは
・ノミ強(つよ)く クエハヤか脇(わき)
・踏(ふ)みてまた 腰踏(こしふみ)み殺(ころ)す

・時(とき)に君(きみ) 団扇(うちは)お上(あ)けて
・響動(とよ)ませは 臣(とみ)も喜(よろこ)ひ
・クエハヤか 金弓(かなゆみ)およひ
・當麻国(たえまくに) ノミに賜(たま)わり
・言(い)えは妻(つま) 付無(つきな)しの身(み)は
・弓取(ゆみとり)そこれ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります