現代語訳

・海女の連中が年が明けて群れ出る頃、若姫が椀にワカミヅを汲もうと釣瓶を上げた
 ・そのとき、影が映ったことに驚いて、若姫に「ソラツカミ※マレヒト※を見ました」と告げた
 ・話を聞いたが現場に行くと御衣装を着た貴人(ヤマサチヒコ)を確認したので、八重の畳を敷き設けて家に引き入れた
  ・そして、此処に来た理由を問うと、ヤマサチヒコは鉤を探しているということを話した
 ・ハテ守に尋ねてみると、ウド守が来てこう言った
  ・「交網の乗った誰かのカモ(船)が来る元旦の朝、カモに添えられた札を見ればワカ(和歌)が記されていた
  ・それには『シホツツが 目無し交網を 張るべらや ミチヒノタマは ハテの神風』とある」
 ・このとき、ハテ守が諸海女を召して 鉤を探す方法を問うた
  ・すると、ヒキメは「粗籠網で引きましょう」と答えた
  ・また、クチメは「釣りをしましょう」と答えた
  ・また、アカメは「目無し網が良いでしょう」と答えた
 ・これを以ってハテ守は諸海女をアカメに添えて、目無し網を四方に張り巡らせた
 ・そこに大鯛が現れてクチ(イシモチ?)を噛み裂きながら、近くまで寄って来た
 ・アカメは そのクチ元鉤を見つけ、を生簀に入れて「待つべし」と告げた
 ・なお、これ以前にハテ守の夢にもが出てきており、その際にがこのように申した
  ・「私はであるが故にクチを捧げます
  ・また、私は食物としてください」
・(その後、ヤマサチヒコに これらのことを告げられて無事に元鉤を見つけ出した)
 ・そのため、これを以って皆に詔を発した
  ・「"魚の君"、すなわち"魚の中でも尊いもの"であることにする
  ・また、の鱗に三つの山がある、これを印とせよ(ミツウロコ)
  ・三つ山のとはこれである
  ・また、を奪ったクチは忌むこととする」
 ・また、ヤマサチヒコは鉤を見つけたアカメを褒めて"ヨドヒメ"の名を与えた

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用語解説

・ソラツカミ:"人の認識力を超えた存在"や"現実離れした存在"などの意
・マレヒト:"旅人"もしくは"会う機会の少ない貴人"を指す

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原文(漢字読み下し)

・海女(あま)の共(とも) 明(あ)けて群(む)れ出(て)る
・若姫(わかひめ)か 椀(まり)に若水(わかみつ)
・汲(く)まんとす つるへ撥(は)ぬれは
・影(かけ)写(うつ)る 驚(おとろ)き入(い)りて
・親(たら)に告(つ)く 空(そら)つ神(かみ)かは
・稀人(まれひと)と

・父(ちち)は御衣裳(みはも)お
・望(のそ)み見(み)て 八重(やゑ)の畳(たたみ)お
・敷(し)き設(もう)け 率(ひ)き入(い)れ申(ま)して
・故(ゆえ)お問(と)ふ 君(きみ)ある形(かたち)
・宣給(のたま)えは ハテ守(かみ)しはし
・思(おも)ふ時(とき) ウド守(もり)来(き)たり
・交網(かたあみ)の 誰(たれ)かカモかある
・年(とし)の朝(あさ) 歌(うた)得(え)添(そ)むるお
・取(と)り見(み)れは ワカの歌(うた)あり

・シホツツか 目無(めな)し交網(かたあみ)
・張(は)るへらや 満干(みちひ)の珠(たま)は
・ハテの神風(かんかせ)

・時(とき)にハテ 諸(もろ)海女(あま)召(め)して
・これお問(と)ふ ヒキ女(め)は引(ひ)かん
・粗籠網(あらこあみ) クチ女(め)か釣(つ)りも
・由無(よしな)しや アカ女(め)一人(ひとり)は
・目無(めな)し網(あみ)

・ここにハテ守(かみ)
・諸(もろ)海女(あま)お アカ女(め)に添(そ)えて
・目無(めな)し網(あみ) 四方(よも)翻(ひ)れ躍(と)れは
・大鯛(おおたい)か クチお噛(か)み裂(さ)き
・前(まえ)に寄(よ)る

・アカ女(め)はクチに
・元鉤(もとち)得(ゑ)て 鯛(たい)お生簣(いけす)に
・待(ま)つへしと 告(つ)くれはハテは
・先(さき)に知(し)る 夢(ゆめ)に鯛(たい)来(き)て
・我(われ)魚(うお)の 由無(よしな)きために
・クチ捧(ささ)く 我(われ)は食(みけ)にと

・御言宣(みことのり) 鯛(たい)は魚君(うおきみ)
・厳(みけ)の物(もの) 印(しるし)は鱗(うろこ)
・三(み)つに山(やま) 移(うつ)して換(かえ)す
・三(み)つ山(やま)の 鯛(たい)はこれなり
・クチは忌(い)む アカ女(め)お褒(ほ)めて
・淀姫(よとひめ)と

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります