現代語訳

・これ以前の話、宮場(宮殿造営予定地)にはオコロ※が居た
 ・オコロモチウコ※に似ていて炎を吐く
 ・これ故に民らが恐れて、これを報告した
オコロの正体をモノヌシ(クシヒコ)に問うと、こう答えた
 ・「カグツチ※は、ハニヤス※タツ※(竜)を生ませようと万の子を儲けました
 ・しかし、竜には成らず、地中の穴に棲みつくようになりました
 ・願わくば、人として扱って欲しいものです」
・このようにモノヌシが申せば、ニニキネが詔を発した
 ・「汝に命ずる、アメノカミ(陽陰の守=ヒヨミカミ)のヤマサ※を生んで、ミカマ(竈)を守れ
 ・オフカンツミ※(穢神潰=桃)は埴が清く、マツル(祀る・纏る)社を造ってシコメ※(鬼霊)を避けるべし
 ・また、兄弟のイクシマ・タルシマ※も尊名を与えれば守護を為すだろう
 ・私の宮地 ニハリの新宮のナカハシラ(中柱)の根を抱え、四所(竈・門・井・庭)の守護を兼ねて共に守るべし
 ・春は竈、9尺底の地底にある、南に向けて東枕に伏せよ
 ・夏は門、3尺底の地底にある、北に向けて西枕に伏せよ
 ・秋は井戸、7尺底の地底にある、東に向けて南枕に伏せよ
 ・冬は庭処、1尺底の地底にある、西に向けて北枕に伏せよ
 ・腹・背・頭は足に従う、礎に敷き座す床をいかすれ(掻き回せ)」
・こうしてオコロオコロカミの名を賜り、新宮を守護することになった

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用語解説

・オコロ:炎を吐く竜もどきとされる。ミヅチやモグラを指すと推定される(モグラを土竜と書くことにも関連するか?)
・モチウコ:不詳。オコロに似ているとされる(モグラの異称にウゴモツなるものがある)
・カグツチ:ミクマノで火災が起こった際にイサナミが生んだ火の神
・ハニヤス:イサナミが死の間際に生んだ土の神
・タツ:いわゆる竜(龍)を指すものと思われ、雨を操るとされる
・ヤマサ:八方・屋を治める八神霊の総称
・オフカンツミ:イサナミが放ったシコメを撃退した桃であり、『古事記』でいうオオカムヅミに当たる
・シコメ:クマノカミの神使の鬼霊を指す
・イクシマ・タルシマ:宮の四方の御垣を守る兄弟神

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原文(漢字読み下し)

・先(さき)に宮場(みやは)に
・オコロあり モチウコに似(に)て
・炎(ほのほ)吐(は)く 民(たみ)ら恐(おそ)れて
・これ告(つ)ける モノヌシ問(と)えは
・答(こた)え言(い)ふ カグツチ竜(たつ)お
・ハニヤスに 万子(よろこ)生(う)ませと
・竜(たつ)成(な)らす 穴(あな)に憂(うれ)ふる
・願(ねか)わくは 人(ひと)為(な)し給(たま)え

・モノヌシか 申(もふ)せは御孫(みまこ)
・御言宣(みことのり)

・汝(なんち)受(う)けへし
・陽陰(あめ)の守(かみ) ヤマサを生(う)みて
・竈(みか)守(まも)り

・穢神潰(おふかんつみ)は
・埴(はに)清(し)きて  纏(まつ)る社(や)造(つく)り
・鬼霊(しこめ)退(な)し 兄弟(ゑと)のイクシマ
・タルシマと 尊名(かみな)賜(たま)えは
・守(もり)も為(な)し

・我(わ)か新治(にいは)りの
・主屋(あらや)建(た)つ 中(なか)つ柱(はしら)の
・根(ね)を抱(かか)え また四所(よところ)の
・守(もり)も兼(か)ね 共(とも)に守(まも)れよ

・春(はる)竈(かまと) 九尺底(こたそこ)にあり
・南(さ)お向(む)きて 東枕(きまくら)に伏(ふ)せ
・夏(なつ)は門(かと) 三尺底(みたそこ)にあり
・北(ね)に向(む)きて 西枕(つまくら)に伏(ふ)せ
・秋(あき)は井戸(ゐと) 七尺底(なたそこ)にあり
・東(き)に向(む)きて 南枕(さまくら)に伏(ふ)せ
・冬(ふゆ)庭処(にわと) 一尺底(ひたそこ)にあり
・西(つ)に向(む)きて 北枕(ねまくら)に伏(ふ)せ
・腹(はら)・背(せ)・頭(くひ) 足(あし)に従(したか)ふ
・礎(いしすゑ)に 敷(し)き座(ま)す床(とこ)を
・いかすれと オコロの守(かみ)と
・名(な)お賜(たま)ふ 弥々(よよ)いかすりて
・主屋(あらや)守(も)るかな

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります