現代語訳

・6万年を経て51本目の真榊がサクスズとなったため、去年(51鈴19穂)遂に真榊の植え継ぎが尽きてしまった
・(これについて、カスガは このように語った)
 ・「昔 アマテル神の詔によって、私(カスガ)が26本目の鈴を植えた
 ・また、後の25本も詔を受けて順次 植え継いできた(詔を受けて、26+25=51本の真榊をカスガが植え継いでいた)
 ・しかし、宮の前に君が居なくなってしまった以上、これからどうすべきであろうか?(ウガヤもアマテルも隠れたため)」
・そこで、フタヱが このように言った
 ・「カスガ殿がミカサ社での神祭を離れても、今 イセに仕える守がそれを補うでしょう」
・すると、カスガは「確かに理に適っている」として、自ら自生する真榊を探しに国々を巡ることにした
 ・これに続いてモノヌシ(クシミカタマ)もモノノベに告げ、カスガノカミを導かせた
 ・諸守は祝の門出を以って国々を巡り、真榊の捜索は二方、三方、十方とかつて無いほどの規模で行われた
・イヨに到ればコトシロヌシ(ツミハ)が館に向い入れ、「鈴の苗はありましたか?」と問うた
 ・それにカスガが「手を尽くしたが見つからない」と答えた
・そのとき、クシミカタマが「真榊は翁(カスガ)が植え継いでください」と言った
・すると、カスガは このように答えた
 ・「私は臣である故、君の御業と定められた天の真榊に手を出すことはできない
 ・私に出来るのは宣言を宣すことのみである」
・そこで、クシミカタマが「汝は統治の基を棄てる気ですか?」と問うた
・すると、カスガは畏れて「そうではない、"植え継ぎ(植え継ぐ者の正統性が変わること)"を恐れているのだ」と答えた
クシミカタマが「では、イフキカミ(ツキヨミの子)に頼むのはどうですか?」と問うた
・そのとき、イフキカミの妻のタナコ(イチキシマヒメ)が居り、それに応えて言った
 ・「昔、二尊は日の神(アマテル)とし、その次に月(ツキヨミ)、その次にとしました
 ・よって月の子(イフキカミ)であり、君とはしなかったのです
 ・日の神の嗣を得て植えるべきは、君を受け継ぐ若きタケヒト(カンヤマトイワレヒコ=神武)でしょう
 ・そう思って植え継ぎを続けておかねば、アメノムシハミ(陽陰の不調和)となります(オモタル朝のようになる)
 ・また、アメノムシハミが晴れる時には、もう苗が生えないのかもしれません」
・そこで、ツミハは「最後の真榊がサクスズとなったのに、20年の間 伸び続けたのは何故ですか?」と問うた
・すると、カスガは「既に(法則が)失われてしまったのだ、これもイセノミチ(基本法則の内)であろう」と答えた

※このときアマテルもウガヤも神上がっているため、オモタル朝の末期と同様に天つ君の不在の状態となっている

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用語解説

・イフキヌシ(イフキカミ):ツキヨミの子であり、ハタレ根討伐の後に阿波のイフキカミとなる
・タナコ:アマテルとハヤコの御子で、イフキカミの妻。『記紀』でいうイチキシマヒメに当たる

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原文(漢字読み下し)

・六万年(むよろとし) 経(へ)て去年(こそ)尽(つ)きる
・さく鈴(すす)そ 昔(むかし)カスガに
・御言宣(みことのり) 二十六(ふそむ)の鈴(すす)お
・我(われ)植(う)えて 後(のち)の二十五(ふそゐ)も
・御言宣(みことのり) 受(う)け巡(めく)り植(う)ゆ
・宮(みや)の前(まえ) 君(きみ)おわさねは
・如何(いか)にせん

・フタヱか曰(いわ)く
・カスガ殿(との) 辞(いな)むミカサも
・今(いま)妹背(ゐせ)の 仕(つか)ふる守(かみ)の
・埋(う)ますへし これ理(ことわり)と
・国(くに)巡(めく)る モノヌシ告(つ)れて
・モノノベら カスガの尊(かみ)お
・導(みちひか)す 諸守(もろかみ)祝(いは)ふ
・門出(かとて)して 国々(くにくに)巡(めく)り
・真榊(まさかき)の 二方三方十方(ふたゑみゑとゑ)
・嘗(かつ)て無(な)く

・イヨに到(いた)れは
・コトシロか 館(やかた)に入(い)れて
・主(あるし)問(と)ふ 鈴苗(すすなえ)ありや
・嘗(かつ)て無(な)し 手(て)お空(むな)しくす
・モノヌシか 翁(をきな)植(う)えんや
・カスガまた 我(われ)は臣(とみ)なり
・君(きみ)植(う)ゆる 天(あま)の真榊(まさかき)
・如何(いか)にせん 我(われ)は宣言(のとこと)
・宣(の)んすのみ

・また問(と)ふ汝(なんち)
・治(た)お棄(す)つや ホロして曰(いわ)く
・治(ち)は棄(す)てす 植(う)ゆお恐(おそ)れて
・またも問(と)ふ イフキカミかや

・時(とき)に母(はは) タナコ姫(ひめ)あり
・応(こた)え言(い)ふ 昔(むかし)二尊(ふたかみ)
・日(ひ)の神(かみ)お 君(きみ)月(つき)は次(つ)く
・次(つ)くは臣(とみ) この子(こ)臣(とみ)なり
・臣(とみ)お以(も)て また君(きみ)とせす

・日(ひ)の神(かみ)の 嗣(つき)得(ゑ)て植(う)ゆる
・君(きみ)は今(いま) 若(わか)きタケヒト
・思(おも)わねは 陽陰(あめ)の蝕(むしは)み
・晴(は)るる時(とき) 苗(なえ)生(は)ゑ無(な)んや

・主(あるし)問(と)ふ さく鈴(すす)二十(はたち)
・伸(の)ひ如何(いか)ん 過(かれ)に失(う)せたり
・これも陽陰(あめ)

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります