現代語訳

・そのとき、タチカラヲ※が進み出て「先程の話の中の、盗人が受ける病とはどのようなものですか?」と質問した
・すると、アマテルは和して詔した
 ・「しばし心を静めて待つべし
 ・私は常日頃、人の振る舞いを観てきたが、皆悉く異なっている
 ・それは地神(土地の神)の威勢を受けて生まれ育ち、その習俗を活かし、それを倣っているからである
 ・すなわち、土地によって言葉も習慣も異なり、土地の境の隔たりによって分かれている
 ・また、生まれた土地は違えども、幼い時に その土地に馴染めば その土地の風習が身について行くだろう
 ・人は空に住んだとしても空を飛ばず、埴を踏めばその応え(反動)を知る
  ・これは風神・埴神の守り司る理である(自然の摂理と言うことか?)
 ・また、人は経験を通して善し悪しを感じ、それは終始 天地に告げられる
  ・罪も同じく、隠し盗む経験も、風を伝って天に届くのである
  ・さらに喩え足音を立てずに盗みを成功させたとしても、土に伝わる振動が地に届くのである
  ・そして、犯人自身の胸の鼓動が騒げば言葉が乱れ、それが行動に現れ、問答によって遂に露わになる
 ・他所からの報告もあるが、結局は己の罪を伝える3つの原因からは逃れることはできない
  ・そのため、喩え主人(被害者)が許したとしても、天地が罪を裁くことになるだろう」

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用語解説

・タチカラヲ:オモイカネとヒルコの子で、種々の活躍をする。『記紀』でいうタヂカラオに当たる

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原文(漢字読み下し)

・タチカラヲ 進(すす)み申(もふ)さく
・盗人(ぬすひと)の  三(み)つ目(め)に知(し)るる
・槌(つち)如何(いか)ん 神(かみ)は和(やわ)して
・御言宣(みことのり)

・しはし心(こころ)を
・静(しつ)め待(ま)て 我(われ)人振(ひとふ)りを
・常(つね)見(み)るに 悉(ふつ)く異(ことな)る
・地神(くにかみ)の 息吹(いきふく)く風(かせ)を
・受(う)け生(う)まれ 活(いき)すとなれは
・慣(なら)はしの 言葉(ことは)も地(くに)お
・隔(へた)つれは 変(か)はれと他所(よそ)の
・幼子(おさなこ)も 馴染(なし)めはそこの
・振(ふ)りとなる

・空(うつほ)に住(す)めと
・空(そら)飛(と)はす 埴(はに)踏(ふ)み居(お)れは
・応(こた)え知(し)る 風(かせ)・埴神(はにかみ)の
・守(まも)る故(ゆえ) 見(み)る聞(き)く度(たひ)に
・善(よ)し悪(あ)しも ひめもす天地(あめ)に
・告(つ)けあれは 隠(かく)し盗(ぬ)むも
・身(み)に添(そ)ふる 風(かせ)より天(あめ)に
・告(つ)くるなり

・二(ふた)の盗(ぬす)みは
・跼(せくくま)り 抜(ぬ)き足(あし)なすも
・土(つち)の神(かみ) 恵(めく)みによりて
・また告(つ)けす

・三度(みたひ)損(そこ)なふ
・己(おの)か胸(むね) 騒(さわ)きあるより
・言(こと)震(ふる)え 見目(みめ)に表(あらは)れ
・その主(ぬし)は 故(かれ)に問(と)ひ詰(つ)め
・ここ察(さと)し また裏問(うらと)えは
・つい語(かた)る

・他所(よそ)の訴(うた)えも
・預(あつ)かれと 三(み)つ知(し)る告(つ)けの
・二度(ふたたひ)も 陽陰(あめ)の御種(みたね)と
・君(きみ)の告(つ)け 待(ま)ち許(ゆる)せとも
・品(しな)により 天地(あめ)より君(きみ)に
・告(つ)けあるそ 真(まさ)に恥(は)つへし
・天地(あめつち)か 悪(わる)さなせそと
・逆為(さかし)こそすれ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります