現代語訳

・(アマテルはミホツヒメを例に挙げて話を続けた)
 ・「コモリカミの母親であるミホツヒメ※は親心が解けず、このように問うた
  ・『その子に求む 荒猛の 心もがな(なぜ、子供に荒猛な心が生じるのか)』
 ・そこで、このように教えた
  ・荒猛な心は風が激しく俄か降りの天気のように、また松の曲がった節のように千年経っても治らない
  ・そのような子を持った親は、我慢できずに子と同じように荒猛な心で当たってしまう
  ・反面、愚かで暗く鈍い子は、吹き打たれれば痛みを我慢して押し殺すので、これもまた曲がってしまう
  ・また、そのような痛みを交わす悪賢さを得て、それを自慢するようならば これもまた曲がって後にハタレになるだろう
  ・荒猛な心の意義を誤ってはならない、親も荒猛な心を謹む必要があるのだ
  ・また、暗い子には時間を掛けてでも細かく教えれば、そのうち理解することができるだろう
  ・そして、やがて年月を経て成長すれば、その鈍さも去り、業の習得も早い者へと成長するのだ
  ・このように、初めから優れた能力を望むものではない
  ・百回、千回教えても覚えなければ、教育者の問題があるのかもしれない
  ・そうした場合には、良き教育者を求めて、その者に教えを乞うべし
  ・狭い料簡を排して子を育てれば、10年のうちに直るだろう
  ・木は芽を出して30年もすれば枝は伸び栄え、100年で木工材料に使えるほどとなる
  ・さらに300年で梁に使え、500年で棟に使える大木となる
  ・このように、人も10歳では平均の知識を得て、30歳で梁、50歳で棟の功を得られるように育つ
  ・そのため、篤く恵みのあるユルノリを知り、ことは焦ってはならないのだ
  ・早まれば、早熟と勘違いするハタレになるぞ
  ・だが、ヤタノカガミの文を聞き、それに沿って育てば、ヨコカ(穢れ)も去るであろう
  ・それは、我が心(太陽太陰の神霊)を添えて、優しく天地(日月)が守るからである」

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用語解説

・ミホツヒメ:タカキネの娘でクシヒコの妻となり、ミホヒコ(コモリ)を儲けた。御穂神社祭神の三穂津姫命と思われる

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原文(漢字読み下し)

・親心(をやこころ) 解(と)けぬミホツ姫(め)
・コモリ親(たら) その子(こ)に求(もと)む
・荒猛(あらたけ)の 心(こころ)もかなと
・乞(こ)ひけれは 神(かみ)の御告(みつ)けに

・荒猛(あらたけ)は 風(かせ)激(はけ)しくて
・俄降(にはかふ)り 松(まつ)節(ふし)・瘤(こふ)と
・わたかまり 千齢(ちよ)を経(ふ)るとも
・増(ま)しならす

・親(をや)の心(こころ)も
・鋭(と)し激(はけ)し あえ忍(しの)はすて
・俄風(にはかかせ)

・愚(あろ)かに暗(くら)く
・鈍(にふ)き子(こ)は その荒風(あらかせ)に
・吹(ふ)き打(う)たれ 痛(いた)み忍(しの)へは
・直(な)からす

・鞭(むち)お逃(のか)るる
・早利(はやき)きを 褒(ほ)め喜(よろこ)へは
・過(す)きねちけ ハタレとなるそ

・誤(あやま)るな 親(をや)謹(つつし)めよ
・暗(くら)き子(こ)も 細(こま)かに教(をし)ゑ
・日(ひ)お積(つ)みて 少(すこ)しは通(とふ)る
・月(つき)お経(へ)て 篤(あつ)く教(をし)ゑは
・鈍(にふ)去(さ)るる 年々(としとし)学(まな)ふ
・曙(あけほの)の 業(わさ)も早(はや)きそ

・初(はつ)よりも 良(よ)からて業(わさ)お
・替(かえ)えすとも 百千(ももち)教(をし)ゑて
・覚(おほ)ゑすは 統(し)つむる杖(つゑ)に
・また教(をし)ゆ ゑゑ子(こ)は頼(たの)め
・教人(をしゑと)の 手元(てもと)も松(まつ)の
・苔杖(しもとつゑ)

・生(お)ゑるままにて
・培(つちか)えは 十年(そとせ)に直(なお)る
・萌(きさ)しお得(ゑ) 三十年(みそとせ)弥々(やや)に
・伸(の)ひ栄(さか)え 百(もも)の旁木(つくりき)
・三百(みも)の梁(はり) 五百(ゐも)は棟木(むなき)そ

・人法(ひとのり)も 十年(そとせ)ほほ平(な)る
・三十(みそ)の梁(はり) 五十(ゐそ)は棟木(むなき)の
・功(いさおし)も 篤(あつ)き恵(めく)みの
・緩法(ゆるのり)お 必(かなら)す倦(う)むな
・早(はや)るなよ

・早(はや)きハタレに
・赴(おもむ)かて ヤタのカガミの
・謂(あや)聞(き)けは 汚曲(よこか)お避(さ)るそ
・我(わ)か心(こころ) 入(い)れて癒(ゐや)すく
・陽陰(あめ)か守(まも)るそ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります