現代語訳

・イカルガ宮が成立すると、テルヒコ(クシタマホノアカリ)は十二の后を揃え、またスガタの娘のスガタヒメを内宮とした
 ・そして、宮内では歌を詠んだり、カダカキ(琴)を聴いて楽しんだ
・イカルガ宮に移った翌日、ウテナ(政所)の四方を望むとシラニハヤマにカラスが飛んでいた
 ・そこで、テルヒコクマノ(隈野=凶兆)と思い、遷宮しようと考えた
 ・しかし、アマノコヤネ※オオモノヌシ(クシヒコ※)は、「遷宮するには時期が早い」と止めた
 ・だが、フトタマ※は「君の考えあっての判断を止めるべきではない」と言った
 ・また、カグヤマツミ※は「クマノが現れた翌日に移せば好い前例となる。既に決まったことだ」と言った
・これを聞いたモノヌシ(クシヒコ)は怒って このように言い放った
 ・「フトタマ君(テルヒコ)のトノオチ(政の要)であり、トミオキナ(臣の長老)であろう
 ・それが、昨日遷宮を祝ったばかりなのに、翌日の遷宮を許すとは何事か
 ・これを許せば、ヨロチ(万千)の治世は遠く、1年も経たず締め括れば世の恥となる
 ・汝(フトタマ)の心の穢れに君(テルヒコ)が肖るようならば、私は必要ないだろう
 ・また、この判断が正しければ、茜炎に潰れようが磨金を食おうが穢れることは無いであろう」
・そして、クシヒコは帰って行った後、諸共に話し合って遂に遷宮が決定した
 ・この後、アスカ川の周囲を掘って禊を行った

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用語解説

・アマノコヤネ:ヰチヂの子で、後にニニキネ・ホオテミ・ウガヤの鏡臣(左臣)として活躍する(『記紀』のアメノコヤネ)
・クシヒコ:オホナムチとタケコの長男で、初代コトシロヌシ。『記紀』でいうコトシロヌシだが、オオクニヌシの要素も持つ
・フトタマ:タカキネの三子で、ナガスネヒコの祖父に当たり、テルヒコの左の臣となる(『記紀』のフトダマに当たる)
・カグヤマツミ:マウラの兄で、テルヒコのモノヌシ(右の臣)となる

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原文(漢字読み下し)

・イカルカの 宮(みや)に移(うつ)りて
・その翌時(あすか) 大殿(うてな)に四方(よも)を
・望(のそ)む折(おり) 領庭山(しらにはやま)に
・カラス飛(と)ふ 隈野(くまの)と思(おも)ひ
・宮遷(みやうつ)し

・時(とき)にコヤネは
・早(はや)かれと オホモノヌシも
・止(とと)めける

・フトタマか言(い)ふ
・考(かか)なえて 君(きみ)の仰(おほ)すを
・止(とと)めんや カグヤマも言(い)ふ
・隈野(くまの)現(な)る 翌時(あすか)移(うつ)せは
・好(よ)き例(ためし)  既(すて)に極(きわ)まる

・モノヌシは 怒(いか)りて曰(いわ)く
・フトタマは 君(きみ)の統(との)の大人(おち)
・臣翁(とみをきな) 昨日(きなふ)万歳(よろとし)
・君祝(きみいわ)ひ 今日(けふ)また変(か)わる
・宮遷(みやうつ)し

・万千(よろち)は遠(とお)し
・一年(ひととせ)も 経(へ)さるお狭(せ)めは
・世(よ)の恥(はち)は 汝(なんち)の心(こころ)
・穢(けか)れより

・君(きみ)肖(あやか)らは
・我(われ)居(お)らす 茜炎(あかねほのほ)に
・潰(つ)みすとも 磨金(まろかね)食(は)めと
・穢(けか)れ得(ゑ)す かく言(い)い帰(かえ)る

・諸(もろ)議(はか)り  遂(つい)に移(うつ)して
・アスカ川(かわ) 周(くるわ)に堀(ほ)りて
・禊(みそき)なすかな

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります