現代語訳

オホナムチは一姫のタケコ(オキツシマヒメ)を娶り、間に生まれた子のシマツが三姫を祀った
 ・外ヶ浜のイトウヤスカタカミ(慈愛の安方神)の御供を蝕むウトウ(疎・厭)がいた
コカシラノオロチ(九頭の蛇)が蝕めば、シマツウシ※がハハ(蝕霊)を斬りつけた
 ・これにより、九頭の蛇はコシノホラアナ(越の洞穴)を掘って貫け、シナノに出た
 ・このことは、後にイセに告げられた
・イセのトガクシがシナノに馳せ帰り、九頭の蛇に「汝は恐れているが、一体どういうことだ?」と問うた
・すると、九頭の蛇は答えて言った
 ・「昔、我はフタオロチ(モチコ※・ハヤコ※)であった
 ・姫に生まれて君(アマテル)に召されれば、モチは御子を生みスケに、ハヤは姫を生んで内局となった
 ・その内、セオリツが御后(内宮)になったとき、モチコが妬んで殺そうと考えた
 ・ハヤは君から離れて弟君(ソサノヲ)に媚びれば、それが明るみになって二姫共々に流離うことになった
 ・アカツチの娘のハヤスフヒメが弟君に見染められれば、ハヤオロチが噛み殺した
 ・また、弟君アカツチの弟のアシナツチの娘を乞えば、これを七姫までは噛み食らった
 ・その時、ソサノヲハヤオロチを斬ったが、身はヤスカタ(遺品)として祀られた
 ・これにより、またオオヤマズミ(マウラ)の娘のイワナガとして生まれ、妹のアシツヒメを妬むツミノトリである
 ・また、モチオロチセオリツを噛もうと噛もうと150万年も、ヱゾシラタツノタケ(蝦夷白龍の嶽)で待つ
 ・だが、セオリツは今 神となっているので虚しい限りである」
・話を聞いたトカクシは、このように助言した
 ・「汝、今からヒミノホノホ(日三の炎)を絶つべし
 ・そして、私が供える供物を食べて低く畏まり、サカミを守るのだ
 ・されば、罪も消えて 再び人に成るであろう」
・こうして九頭の蛇のタマノヲを斬ったのが、万のヲタウのハコザキ山である

※八岐大蛇がハヤオロチ(ハヤコ)で、九頭竜がモチオロチ(モチコ)であるとされる

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用語解説

・シマツウシ:オホナムチの子(島津氏の先祖と推定される)
・モチコ:アマテルの元スケ后でホヒの母。ソサノヲとの姦通の疑いで失脚し、ハヤコと共にサスラヒメとなる
・ハヤコ:アマテルの元ウチ后で三女の母。ソサノヲとの姦通の疑いで失脚し、モチコと共にサスラヒメとなる

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原文(漢字読み下し)

・愚霊(おろち)なる 恥(はち)に自(みつか)ら
・さすらひて 慈愛(いとう)お知(し)れは
・オオナムチ 一姫(ひひめ)お娶(めと)る
・子(こ)のシマツ 三姫(みつひめ)祭(まつ)る
・外ヶ浜(そとかはま) イトウヤスカタ
・神(かみ)の御供(みけ) 蝕(は)むウトウあり

・九頭(こかしら)の 蛇(おろち)か蝕(は)めは
・シマツウシ 蝕霊(はは)斬(き)りふれは
・逃(に)け出(い)たり 越(こし)の洞穴(ほらあな)
・掘(ほ)り貫(ぬ)けて シナノに出(て)れは
・これお告(つ)く

・イセのトガクシ
・馳(は)せ帰(かえ)り 汝(なんち)は恐(おそ)る
・これ如何(いか)ん 答(こた)えて昔(むかし)
・ふたオロチ 姫(ひめ)に生(う)まれて
・君(きみ)召(め)せは モチは御子(みこ)生(う)み
・スケとなる ハヤは姫(ひめ)生(う)み
・内局(うちつほね)

・内(うち)セオリツか
・御后(みきさき)に なるおモチコか
・殺(ころ)さんと 妬(ねた)めはハヤは
・君(きみ)お退(し)ゐ 弟君(おときみ)媚(こ)えと
・露(あらは)れて 共(とも)にさすらふ

・アカツチか 姫(め)お弟君(おときみ)に
・因(ちな)むおは ハヤかオロチに
・噛(か)み殺(ころ)す 弟(おと)アシナヅか
・姫(ひめ)お乞(こ)えは 七姫(ななひめ)まては
・噛(か)み食(く)らふ

・時(とき)にソサノヲ
・これお斬(き)り 身(み)おヤス形(かた)と
・祭(まつ)る故(ゆえ) またヤマスミの
・姫(ひめ)と生(う)まれ 妹(いもと)お妬(ねた)む
・罪(つみ)の連(と)り

・またモチオロチ
・セオリツお 噛(か)まん噛(か)まんと
・百五十万年(もゐそよほ) 蝦夷白龍(ゑそしらたつ)の
・嶽(たけ)に待(ま)つ 今(いま)神(かみ)となる
・虚(むな)しさよ

・トカクシ曰(いわ)く
・汝(なんち)今(いま) 日三(ひみ)の炎(ほのほ)お
・絶(た)つへしそ 我(わ)か供食(みけは)みて
・下(した)に降(お)れ 直霊(さかみ)お守(も)れは
・罪消(つみき)えて また人成(ひとな)ると
・結(を)お切(き)れは 撚(よろ)の結断(をたう)の
・山(やま)そハコサキ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります