現代語訳

タマヨリヒメは両親の喪祭を成した後、ただ一人でワケツチカミ(ニニキネ)に参詣した
 ・そこで斎を捧げると、ウツロイ※が疑って「姫一人がワケツチカミに仕えるのか?」と問うた
 ・タマヨリヒメは「違います」と答えた
 ・ウツロイは再び「世に因む(ヨニチナム)のか?」と問うた
 ・タマヨリヒメは「汝が何者か知らず、何故に威すのかも知りませんが、私はカミノコです」と言った
 ・すると、ウツロイは跳び上がって鳴神を落して去って行った
・その後のある日、タマヨリヒメがワケツチ宮に詣でて禊をしているとシラハノヤが軒に刺さった
 ・すると、タマヨリヒメの月経が止まって孕み、後に男児が生まれたので その子を育てた
 ・その子が3歳になったとき、子が弓を指して「あれが父です」というと、矢が天空に昇って行った
 ・そして、その矢は「ワケイカツチの神である」という話が世に響き渡った
タマヨリヒメは娶ってくれる者を請うたが、諸守に頷く者はいなかった
 ・そのため、タマヨリヒメと御子はタカノノモリに隠れ住んだ
 ・そこにワケイカツチの祠を成し、常に(ワケイカツチの)ミカケ(御影)を祀った

※『山城国風土記』の「賀茂社」の内容に酷似する

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用語解説

・ウツロイ:空を治める神。ニニキネのニハリ入りをアマテルに咎められた時、ニニキネが庇ったことから関係が深くなる

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原文(漢字読み下し)

・タマヨリは 喪祭(もまつり)なして
・ただ一人(ひとり) ワケツチ神(かみ)に
・また詣(もふ)て 斎(ゆふ)捧(ささ)くれは
・ウツロイか 疑(うたか)ひ問(と)わく
・姫(ひめ)一人(ひとり) ワケツチ神(かみ)に
・仕(つか)ふかや 答(こた)え然(しか)らす

・また問(と)わく 世(よ)に因(ちな)むかや
・姫(ひめ)答(こた)え 何者(なにもの)なれは
・威(おと)さんや 我(われ)は守(かみ)の子(こ)
・汝(なんち)はと 言(い)えはウツロヰ
・飛(と)ひ上(あ)かり 鳴神(なるかみ)してそ
・去(さ)りにける

・或(あ)る日(ひ)また出(い)て
・禊(みそき)なす 白羽(しらは)の矢来(やき)て
・軒(のき)に刺(さ)す 主(あるし)の穢気(おけ)の
・止(とと)まりて 思(おも)はす男(を)の子(こ)
・生(う)み育(そた)つ

・三(み)つなる時(とき)に
・矢(や)お指(さ)して 父(ちち)と言(い)う時(とき)
・矢(や)は昇(のほ)る ワケイカツチの
・神(かみ)なりと 世(よ)に鳴(な)り渡(わた)る

・姫(ひめ)・御子(みこ)お 諸守(もろかみ)乞(こ)えと
・頷(うなつ)かす タカノの森(もり)
・隠(かく)れ住(す)む ワケイカツチの
・祠(ほこら)成(な)し 常(つね)に御影(みかけ)お
・祭(まつ)るなり

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります