現代語訳

・今度はツクシの三人のハタレが蜂起し、ナカクニ※のハナヤマノノ(花山の野)を中心に軍勢を集めた
 ・そこでアマテルは詔し、ウケモチ※の子孫のカダマロ※を偵察として派遣した
カダマロが花山に着くと、キクミチ※が作った菊の咲き乱れる幻想を見せられた
 ・また、埴水が沸き立って叢雲を起こし、灯火や蛍火が舞って、笑い声が起こった
 ・すると、イカリヒ(怒り霊)がアオタマ(穢汚霊)を吐いてゆく手を阻んだ
・そこで、カダマロは一度帰ってアマテルに報告した
 ・報告を受けたアマテルは、暫し考えて このように詔した
  ・「これはキ・ク※(キツネとクツネ)であろう
  ・キツネとは東・西・北(キ・ツ・ネ)と同じと考えるべし
  ・木(東)根(北)より生るのだから、西・南を経て北に来て住むネスミ(鼠)を油で揚げて与えればよい
  ・しかし、クツネは少々異なり、クは煙の匂いを嫌がる
  ・そこでハシカミ(椒)の陽香(生姜)・陰香(茗荷)を燻して追い払え」
・こうした戦略を受けたカダマロは諸守にこれを伝え、戦場のハナヤマノノの向かった
 ・戦場では、ハタレ三人が咲き乱れる菊の色を幾度も変えて、カミイクサ(官軍)を翻弄した
・そこで、カダマロは揚げ鼠を戦場に投げ入れると、キ・クの民が奪い合いながら貪り食った
 ・この際に諸守が勢い強く攻め立てると、キ・クの民は揚げ鼠を譲って逃げてしまった
 ・そこで逃げるキ・クの民を追い詰めて1000人捕らえ、早速 処刑しようと試みた
・すると、捕らえた捕虜は悉く嘆き「僕らは降参して天民に仕えましょう」と命乞いをした
 ・これを哀れに思ったカダマロは、縄を解いて許してやる代わりに藁縄を綯せた
・そしてハジカミ(椒)と陰香(茗荷)を敵に向けて燻すと、敵の体勢は乱れた
 ・そこで、乱れたところを叩いていき、遂に悉く捕らえることに成功した
・同様に三人のハタレも燻して追い詰め、三里の野に張り巡らせた網の中に追い込んで皆捕らえた
 ・こうして捕らえて数珠つなぎにしたキ・クツネは、総勢33万にも及んだ
 ・また、頭領の三人は牢屋に入れて、カミイクサは凱旋を果たした

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用語解説

・ナカクニ:本州の中央部を指す(広義には、ヒタカミ・根国・サホコチタルを除く本州を指す)
・ウケモチ:トヨクンヌと同世代のカミであり、農業の道を開いた(世襲名)。『日本書紀』でいうウケモチに当たる
・カダマロ:ウケモチの8代目に当たり、稲作と養蚕の道を伝えたことでカダノカミとなる(ホツマでは稲荷神の一つになる)
・キクミチ:ムハタレの一つで、キツネとクツネによって構成されるという。妖術を駆使して官軍を翻弄するが、後に帰順する
・キ・ク:キツネは鼠を好み、クツネは煙の臭いを嫌うという(『日本書紀』では「天狗」を「アマツクツネ」と読む)

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原文(漢字読み下し)

・またハタレ 筑紫(つくし)の三人(みたり)
・中国(なかくに)の 花山(はなやま)の野(の)に
・朋(とも)集(あつ)む 時(とき)に和照(あまて)る
・御言宣(みことのり) ウケモチの孫(まこ)
・カダマロに 国(くに)見(み)て返(かえ)れ

・カダマロが 到(いた)れはハタレ
・色(いろ)変(か)えて  咲(さ)き乱(みた)れたる
・キクミチの ココ騒(さわ)ゆくや

・埴水(ひめ)躍(おと)り 叢雲(むらくも)灯火(たひ)や
・蛍火(ほたるひ)の 笑(わら)いあさけり
・怒(いか)り霊(ひ)の 穢汚霊(あおたま)吐(は)けは
・進(すす)み得(ゑ)す

・カダマロ帰(かえ)り
・申(もう)す時(とき) しはし考(かんか)ゑ
・御言宣(みことのり) これキ・クならん
・キツネとは 木(き)は根(ね)より生(な)る
・西(つ)・南(さ)を経(へ)て 北(ね)に来(き)て住(す)める
・鼠(ねすみ)をは 油(あふら)に揚(あ)けて
・厭(いとふ)ふへし

・クはちと違(たか)ふ
・クは煙(きう)の 陽(を)の放(ほお)を厭(いと)ふ
・椒(はしかみ)の 陽香(をか)・陰香(めか)燻(ふす)へ
・拉(ひし)かんと

・御言(みこと)を承(う)けて
・カダマロが 諸(もろ)に教(をし)ゑて
・野(の)に到(いた)る ハタレ三人(みたり)か
・咲(さ)き乱(みた)れ 幾回(いくゑ)変(か)わりて
・驚(おとろ)かす

・カダマロ投(な)ける
・揚(あ)け鼠(ねすみ) キ・ク民(たみ)奪(うは)ひ
・貪(むさほ)るを 諸守(もろかみ)強(つよ)く
・戦(たたか)えは 譲(ゆつ)り逃(に)くるを
・追(お)い詰(つ)めて 千人(ちたり)捕(とら)えて
・斬(き)らんとす

・悉(ふつ)く嘆(なけ)きて
・僕(やつかれ)ら 返(かえ)り詣(もふ)てん
・天民(あめたみ)と 命(いのち)お乞(こ)えは
・カダマロが 皆(みな)解(と)き許(ゆる)し
・藁縄(わらなわ)を 多(さわ)に綯(なわ)せて

・椒(はしかみ)と 陰香(めか)お燻(いふ)せは
・乱(みた)るるを 更(さら)に戦(たたか)ひ
・追(お)ひ詰(つ)めて 悉(ふつ)く捕(とら)えて
・先例(さきためし) 遂(つひ)に追(お)ひ詰(つ)め
・三(み)ハタレを 縛(しは)る蕨(わらひ)に

・キ・クツネを 三里(みさと)の網(あみ)を
・野(の)に張(は)りて 皆(みな)追(お)ひ入(い)れて
・珠(たま)つなき キ・クツネ総(すへ)て
・三十三万(みそみよろ) 三人(みたり)はツツガ
・諸(もろ)帰(かえ)りけり

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります