現代語訳

・時にニニキネには思うところがあった
・そこでコヤネを召してニハリに留め、カツテを召して海辺を上り御幸した
オオヤマスミ(マウラ)は、ニニキネをヰヅサキ(伊豆の岬)の仮屋に迎えて御饗を成した
 ・カシハ(膳)を為す時、アシツヒメは「私は懐妊しました」と申し上げた
 ・すると、マウラは「イセに告げよう」と装いを為し、母姉を連れて仮屋に到ると接見を願った
 ・そこで、マウラの妻は「この妹(アシツヒメ)には、美しい姉もおります」とニニキネに申し上げた
 ・ニニキネマウラの申し出にフタココロ(浮気心)が湧いた
・そこで、マウラが勧める姉のイワナガ※を召したが、その容姿は鋭く見た目も悪かった
 ・故にニニキネは気を落とし、ミヤビを変えて「やはりアシツヒメが良い」と宣言した
 ・これにマウラは驚いて妻を叱り「なんということをしてくれたのだ、もう出てこずに急いで帰れ」と言って追い返した
・このことからアシツヒメは母と姉の恨みを買うことになった
 ・そこで母と姉はシモメ(下侍)を召してアシツヒメを陥れるアタマクラ(他枕)の噂を流した
 ・この噂はやがてシロコ(白子)を宿にしていたニニキネに耳に入った
ニニキネは この疑惑を契機に、アシツヒメを旅屋(白子宿)に残して、夜中のうちにイセに帰ってしまった
 ・アシツヒメが目覚めると一人になっており、後追ったがマツサカに塞ぎ止められてしまった
 ・そのため、仕方なく白子宿に戻り「妬まれの 我が恥濯げ この桜」と誓った

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用語解説

・イワナガ:マウラの娘、アシツヒメの姉で、後にハヤコの転生ということが分かる。『記紀』でいうイワナガヒメに当たる

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原文(漢字読み下し)

・時(とき)に君(きみ) 思()すことあり
・コヤネして ニハリに留(とと)め
・カツテして 海辺(うみへ)お上(のほ)る
・御幸(みゆき)告(ふ)れ オオヤマスミは
・ヰヅサキの 仮屋(かりや)に迎(むか)え
・御饗(みあえ)なす

・膳(かし)なす時(とき)
・アシツ姫(ひめ) 妹(いめ)孕(はら)めりと
・申(もう)す故(ゆえ) イセに告(つ)けんと
・装(よそ)ひなす 時(とき)にその母(はは)
・姉(あね)連(つ)れて 仮屋(かりや)に到(いた)り
・まみえ乞(こ)ふ 召(め)せは申(もう)さく
・妹(いもと)さえ 我(わ)か慈(いつく)しの
・姉(あね)ありと 言葉(ことは)飾(かさ)れは
・二心(ふたこころ)

・姉(あね)イワナガお
・召(め)せはその 容鋭(かたちすると)く
・見目(みめ)悪(あ)しく 故(かれ)に肝消(きもけ)し
・ミヤビ変(か)え やはりアシツと
・宣給(のたま)えは 父(ちち)驚(おとろ)きて
・妻(つま)叱(しか)る かくあらんとて
・出(いた)さぬお 急(いそ)き帰(かえ)れと
・追(お)ひ遣(や)れは

・母(はは)・姉(あね)恨(うら)み
・下侍(しもめ)して 妹(いもと)陥(おと)さん
・他枕(あたまくら) 遂(つい)に偽(いつわ)り
・シロコ宿(や)て 君(きみ)に聞(きこ)ゆる
・疑(うたか)いに 旅屋(たひや)お夜半(よは)に
・立(た)ち出(い)てて イセに帰(か)えます

・姫(ひめ)一人(ひとり) 寝(ね)覚(さ)めて行(ゆ)けは
・目(ま)つ前(さか)に 塞(せ)き止(と)められて
・シロコ宿(や)に 帰(かえ)り誓(ちか)つて
・妬(ねた)まれの 我(わ)か恥濯(はちすす)け
・この桜(さくら)

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります