現代語訳

・なお、これ以前にトヨタマヒメは孕んでおり、これ故にホオテミは姫の到着を遅らせ、こう言付けていた
 ・「私より後にカモに乗ってキタツへ行くがよい
 ・そして、私のために産屋を成して、そこで待っていてくれ」
・これを以って松原(気比の松原)に産屋を建てさせていた
 ・しかし、産屋の棟が出来る前にカモが到着してしまったため、屋根の葺きすら終わっていない状態で姫が入った
 ・姫はその未完成の産屋の中で御子を出産した
カツテは椅子と入浴用の御湯を捧げた
 ・ウガヤノユとは、木の花の白いカニ(香泥)が咲くコハウノメ(凝湯泥)である
 ・また、アマガツ※(天形)なども用意した
・なお、イマミコ(生まれた子)がカニツバ(汚泥唾)を吐くと、ココモ(回虫)があると診断された
 ・そのため、スセリ宮(ホノススミ)より御湯が進上され、これをマクリ(海人草)と共に飲ませた
 ・すると、これらが功を奏し、イマミコの汚泥を治した
 ・ホノススミは この功を讃えられて、14鈴の齢(84万歳)にシラヒゲカミの名を賜った
・また、予てよりカツテが このように申していた
 ・「キ(夫)は産宮を覗いてはなりません
 ・4月15日(イマミコの誕生日)より75日は、日毎に産屋の産湯を捧げます
 ・これは古くから伝えられているノコルノリ(重要な風習)です」
・また、ホタカミは、ハラノノリ(ハラの法)に則ってホソノヲ(臍の緒)を切った
モノヌシ(コモリ)は、桑の弓を鳴らしてハハ矢を射るヒキメ(蟇目)を行った(恐らく悪霊退散の儀式)
・そして、コヤネが斎名を考えて、"カモヒト"と名付けた

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用語解説

・アマガツ:布で作られた赤子を模った人形(人形に対する天形を指す)。穢れや災いを人に代わって受けるものとされる

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原文(漢字読み下し)

・これの先(さき) 后(きさき)孕(はら)みて
・月(つき)望(のそ)む 故(かれ)に後(あと)より
・カモおして キタツに行(ゆ)かん
・我(わ)かために 産屋(うふや)お成(な)して
・待(ま)ち給(たま)え

・故(かれ)松原(まつはら)に
・産屋(うかや)葺(ふ)く 棟(むね)合(あ)わぬ間(ま)に
・カモ着(つ)きて 早(はや)や入(い)りまして
・御子(みこ)お生(う)む

・カツテは倚子(いす)も
・御湯(みゆ)も上(あ)く 産(う)か屋(や)の湯(ゆ)とは
・木(こ)の花(はな)の 白(しろ)き香泥(かに)咲(さ)く
・凝湯泥(こはうのめ) また天形等(あまかつら)

・今(いま)御子(みこ)の 汚泥唾(かにつは)吐(は)けは
・ココモあり スセリ宮(みや)より
・御湯(みゆ)進(すす)め 海人草(まくり)と共(とも)に
・汚泥(かに)お治(た)す

・故(かれ)永(なか)らえて
・十四鈴(そよすす)の 齢(よわひ)ウカワの
・宮(みや)褒(ほ)めて 白髭守(しらひけかみ)と
・名(な)お賜(たま)ふ

・予(か)ねてカツテか
・申(もう)さくは キは産宮(うふみや)お
・な覗(のそ)きそ 四月十五日(うつきもち)より
・七十五日(なそゐか)は 日(ひ)こと産(う)か屋(や)の
・産湯(うふゆ)上(あ)く 遺(のこ)る法(のり)なり

・ホタカミは 臍(へそ)の緒(を)切(き)るも
・ハラの法(のり) モノヌシ鳴(な)らす
・桑(くわ)の弓(ゆみ) ハハ矢(や)蟇目(ひきめ)そ

・コヤネ尊(かみ) 斎名(な)考(かか)えて
・カモヒトと

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります