現代語訳

・今度は、根の国のシラヒトを召してタカマで裁いた
・まずはカナサキが尋問した
 ・「汝は、サシミメ・クラコの両名を何故捨てたのだ?」
・すると、シラヒトはこの様に答えた
 ・「私は捨ててなどいません
 ・サシミメが家を捨てて出て行き、クラコはそれについて行ったのです」
カナサキが再び同じ質問をすると、シラヒトはこの様に答えた
 ・「私も不思議に思うのです
 ・サシミメ君(クラキネ)に勧めてやったのは、実はこの私なのです
 ・せっかく代々臣の家に嫁いだというのに、その恩を忘れるとは気がしれません」
シラヒトはこの様な態度で言い流した
・すると、カンミムスビ※が叱って言った
 ・「汝、嘘をついて惑わしたな
 ・私は事情をよく知っているのだぞ
 ・サシミメが力添えをしたことで出世し、それを以ってサシミメと関係を持った
 ・これによってクラコに倦むのを隠すためにミヤツに移送し、民の目をごまかしたのであろう」
・ここでシラヒトの量刑が行われ、このように言い渡された
 ・「サシミメの力添えの恩を忘れた罪が200座
 ・母子を捨てた罪が100座
 ・クラコを踏む罪が50座、サシミメを掴む罪が60座
 ・計410座で命去る(死刑)と決まった、これで逃げられぬぞ」
・こうしてシラヒトの刑が決まると、執行までツツガ(牢屋)に入れて置かれた

<<前   次>>

用語解説

・カンミムスビ:トヨケの子で6代目タカミムスビに当たり、『記紀』でいうカミムスビに当たる

<<前   次>>


原文(漢字読み下し)

・根(ね)の国(くに)の シラヒトを召(め)す
・タカマにて カナサキ問(と)わく
・母(はは)お捨(す)て 妻(つま)避(さ)る 如何(いか)ん

・答(こた)え言(い)ふ 己(おのれ)は避(さ)らす
・母(はは)よりそ 家(ゐゑ)捨(す)て出(い)つる
・姫(ひめ)もまま

・また原(もと)を問(と)ふ

・答(こた)え言(い)ふ 代々(よよ)の臣(とみ)ゆえ
・言(こと)為(な)せり 母(はは)は民(たみ)の女(め)
・進(すす)めてそ 君(きみ)の妻(つま)なり
・御恵(をんめく)み 何(なに)忘(わす)れんと
・埋々(ゐゐ)流(なか)す

・カンミムスヒの
・叱(しか)りてそ 汝(なんち)飾(かさ)りて
・惑(まと)わすや 我(われ)よく知(し)れり
・朋(とも)お越(こ)ゑ 力(ちから)を貸(か)して
・母(はは)か上(あ)け 政(まつり)授(さつ)けて
・殊成(ことな)すを 母(はは)に親(した)えは
・姫(ひめ)が倦(う)む 隠(かく)さんために
・流(なか)し遣(や)り 民(たみ)の目奪(めうは)ひ

・力貸(ちからか)す 恵(めく)み忘(わす)るる
・二百座(ふももくら) 避(さ)るも百座(ももくら)
・踏(ふ)むか五十(ゐそ) 掴(つか)むの六十(むそ)て
・四百十座(よもそくら) これ逃(のか)るるや
・答(こた)えねは ツツガに入(い)れて

<<前   次>>

現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります