現代語訳

・また、シロコの桜が御子の誕生日に咲き誇ったことから、誓約の結果 子らはアメミマコ(天御孫)となった
 ・そこで、カモフネを早く飛ばせてオキツ(興津)に到着すると、雉が飛んでサカオリ宮に告げた
  ・この際、アシツヒメは恨んで衾を被り、返事をしなかったので、雉はこの様子をニニキネに告げた
 ・ニニキネは、これにしばらく考えてワカ(和歌)をオキヒコ(御使の名)に持たせてアシツヒメに差し出した
  ・『沖つ鳥は 辺には寄れども 添融も 値わぬ鴨よ はまつ千鳥よ』
  ・(沖にいる鳥は傍に寄ってくるが、近付いて交わることは適わない鴨も居る、去ってしまった渡り鳥よ)
 ・アシツヒメは、この歌に恨みの涙が溶け落ちるほど心に響いたので、裸足のまま裾野を走ってオキツ浜に向かった
ニニキネは喜んで輿を並べてサカオリ宮に向かった
 ・マウラは道の途中で出迎えて、御所にスワカミ(信濃四県の県主)が集った
 ・そして、素早くサカオリ宮に入り、そこで詔を発した
  ・「諸守よ聞くがよい
  ・私は以前、梅・桜・卯の花を髪に挿して駆け巡った
  ・これと御子の胞衣の紋が揃っていたという
  ・そこで、この花を御子の斎名とする
  ・最初に炎の中から出た御子をホノアカリ※と名付け、斎名をムメヒトとする
  ・次に炎の中から出た御子をホノススミ※と名付け、斎名をサクラギとする
  ・最後に炎の中から出た御子をヒコホオテミ※と名付け、斎名をウツキネとする
  ・また、アシツヒメが子を生んだ日より、シロコの桜が咲き続けることからコノハナサクヤヒメ※の名を与えよう」
・以後、コノハナサクヤヒメは宮を造って そこに座した
 ・なお、ナツメノカミが御子の産着を造った
 ・また、御子は母の乳を得て養育されたため、アシツヒメコヤスカミ(子安神)となった

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用語解説

・ホノアカリ:ニニキネとアシツヒメの長男で、ニギハヤヒの父。『古事記』のホデリ、『日本書紀』のホノアカリに当たる
・ホノススミ:ニニキネとアシツヒメの二男で、ウミサチヒコとなる。『記紀』のウミサチヒコに当たる
・ヒコホオテミ:ニニキネとアシツヒメの三男で、ヤマサチヒコとなる。ウガヤの父。『記紀』のヤマサチヒコに当たる
・コノハナサクヤヒメ:"子の花を咲かす姫"の意を持つアシツヒメの称え名

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原文(漢字読み下し)

・シロコの桜(さくら)
・生(うま)れ日(ひ)に 咲(さ)きて絶(た)えねは
・天御孫(あめみまこ) カモ船(ふね)早(はや)く
・とはさせて オキツに着(つ)けは
・雉(きち)飛(と)ひて サカオリに告(つ)く

・姫(ひめ)恨(うら)み 衾(ふすま)被(かふ)りて
・応(こた)え無(な)し 返言(かえこと)すれは
・君(きみ)しはし 思(おも)ひてワカの
・歌見(うたみ)染(そ)め オキヒコおして
・差使人(さおしかと) 姫(ひめ)頂(いたた)きて

・沖(おき)つ鳥(とり)は 辺(へ)には寄(よ)れとも
・添融(さねとこ)も 値(あた)わぬ鴨(かも)よ
・はまつ千鳥(ちとり)よ

・この歌(うた)に 恨(うら)みの斜(なんた)
・融(と)け落(お)ちて 肝(きも)に応(こた)えの
・徒歩(かち)裸足(はたし) 裾野(すその)走(はし)りて
・オキツ浜(はま)

・君(きみ)喜(よろこ)ひて
・輿並(こしなら)へ 行(ゆ)く大宮(おおみや)は
・ヤマスミの 道(みち)迎(むか)えして
・御所(みところ)に スワ守(かみ)会(あ)えは
・すはしりて サカオリ宮(みや)に
・入(い)りまして 諸守(もろかみ)聞(き)けよ
・我(われ)先(さき)に 花(はな)お髪挿(かさ)して
・駆(か)け通(とほ)る これ胞衣(ゑな)の紋(あや)
・斎名(な)成(な)す

・初(はつ)に出(て)る名(な)は
・ホノアカリ 斎名(いみな)ムメヒト
・次(つき)の子(こ)は 名(な)もホノススミ
・サクラギそ 末(すえ)は名(な)もヒコ
・ホオテミの 斎名(いみな)ウツキネ

・また姫(ひめ)は 子(こ)お生(う)む日(ひ)より
・花(はな)絶(た)えす 故(ゆえ)にコノハナ
・サクヤ姫(ひめ) 宮()造()りして
・御座(おわ)します ナツメの守(かみ)か
・産着(うふき)成(な)す 母(はは)の乳(ち)お以(も)て
・養(ひた)します 子養(こやす)の守(かみ)そ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります