現代語訳

【起尽四方の文(きつよちのあや)】

・ミカサヤ(春日大社)にて、アマノコヤネ※が説いた文(マツリノフミ※)はタテヌキ(経糸と緯糸)に織られた
 ・その際、コヤネはこのように語った
  ・「マツリコト(政)とはヨチヒトクサ(四方の民)を治めることである
  ・もし道を開く志があるのであれば、門を開けて授かるべし」
 ・そこで、コモリ※は このように言った
  ・「門を開けたならば、陽陰和合の巧妙さは明らさまであろう」
 ・すると、コヤネは このように応えた
  ・「道はワチ(曲りくねった道)である
  ・早くも遅くも志があって訪ねて来たならば、私が会って その道奥を語ろうと思う
  ・君の政も速やかにもつれを直すのがカミノミチ(陽陰和合の道)である
  ・"形(起)""努め(盛)""満ち(尽)""実(全)"という四つの教えがあるが、これもただ一道
  ・ヲコヌノカミ(クシヒコ※)は この四つを定め、アワトニシル(陽と陰を人に統合する)
  ・人の身の四つを謹み正すのがハタノミチ(機の道=政の道)である
  ・上の司は国を治め、中の司は庭(国の脇)を締め、下の司は端(末端)を守る
  ・故に今説くのが四方の機、これを慕えば結果的に実(全体)を治める
  ・空虚な者は これをいくら聞いても、己の実柱を行き抜けて往来を繰り返すことであろう
  ・されば、機の綴りの空振りの投杼の音のように実に付かず、ただ"のほほ"と聞こえることに同じである」
・このようにコヤネが宣給えば、コモリ(大司)、コキミ(上司)、モミコト(忠司)、ミチヒコ(下司)も皆頷いた

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用語解説

・マツリノフミ:陽陰(日月・神霊・魂魄)を祀る文
・アマノコヤネ:ヰチヂとアサカヒメの子で、カントミ(イセの道の教人)となる。『記紀』でいうアメノコヤネに当たる
・コモリ:クシヒコの子で、3代目オオモノヌシ。18男18女の子を養育した功績により、コモリカミとなる
・クシヒコ:オホナムチの子で、2代目オオモノヌシに当たる。『記紀』でいうコトシロヌシのこと

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原文(漢字読み下し)

【起尽四方(きつよち)の文(あや)】

・ミカサ社(や)に アマノコヤネの
・説(と)く文(ふみ)は 経(たて)に緯(ぬき)織(お)る
・纏(まつ)り事(こと) 四方人草(よちひとくさ)お
・治(をさ)むなり もしや道(みち)聞(き)く
・志(こころさし) 有(あ)らは門(と)開(あ)けて
・授(さつ)くへし

・コモリの曰(いわ)く
・門開(とあ)けなは 和(かみ)の見事(みこと)や
・明(あか)らさま コヤネ応(こた)えて
・道(みち)は曲道(わち) 早(はや)く遅(おそ)きも
・心(こころ)有(あ)り 尋(たつ)ね来(き)たらは
・我(われ)会(あ)ひて その道奥(みちのく)お
・語(かた)るへし

・君(きみ)の政(まつり)も
・速(すみ)やかに もつれお直(たた)す
・和(かみ)の道(みち)

・形(かたち)と努(つと)め
・満(み)ちと実(み)と 四(よ)つの教(をし)えも
・たた一道(ひとち)

・大地(をこぬ)の尊(かみ)の
・この四(よ)つお 陽陰(あわ)人(と)に統(し)れる
・人(ひと)の身(み)の 四(よ)つお謹(つつし)む
・機(はた)の道(みち)

・司(つかさ)の上(かみ)は
・国(くに)治(をさ)む 中庭(なかには)締(し)める
・下端(しもは)足(た)す

・故(かれ)に今(いま)説(と)く
・四方(よか)の機(はた) 慕(した)えは結(うい)に
・実(み)お治(をさ)む

・空(そら)なる者(もの)は
・千々(ちち)聞(き)けと 己(み)の実柱(みはしら)お
・行(ゆ)き抜(ぬ)けて

・還復(こえお)ち返(か)えの
・棚機(たなはた)の 空杼(そらひ)の復(おと)は
・実(み)に付(つ)かす 聞(き)くとのほほと
・のたまえは

・コモリ 九君(こきみ)も
・百尊(もみこと)も 三千彦(みちひこ)も皆(みな)
・頷(うなつ)けは

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります