現代語訳

・(ニニキネがトヨタマヒメを迎えに行けば、姫は社から出てきた)
 ・その時、ニニキネは葉を持って「これを何だ?」と問うた
  ・トヨタマヒメは「葵葉でございます」と答えた
 ・ニニキネは別の葉を持って「これは何だ?」と問うた
  ・トヨタマヒメは「桂葉でございます」と答えた
 ・ニニキネが「いつ頃 果てるか?」と問うと
  ・トヨタマヒメは「まだ果てないでしょう」と答えた
 ・そこで、ニニキネは「汝は世を棄てて道を外れるか?」と問うた
  ・トヨタマヒメは畏れて「外れたくありませんが、渚を泳ぐ嘲りに腹這いの恥を重ねた身では内宮は務まらないでしょう」と答えた
・それに対し、ニニキネはこのように答えた
 ・「そなたがいう恥とは、恥に似て恥にあらず
 ・確と聞け、子を産む後は因みを絶つもの、これは産後に元に戻るまでの75日掛かるためである
 ・ホオテミは予てよりカツテカミに忠告されていたにもかかわらず、覗いてしまった
 ・故に、この恥は そなたの恥では無く、ホオテミの恥なのである
 ・竜の子は、千年海に棲みタツタを知り、千年山に棲みタツフルを知り、千年里に棲みツクハナルを知るという
 ・故に、このミイキを悟って君となるのだ
 ・そなたは渚に落ちて果てる間際、御種を慮って猛心を成して泳ぎ助かったのであろう
 ・これにより、ハイキ(地活)を知った
 ・そして、内宮になったことで嘲りを免れる
 ・これにより、アイキ(天活)を知った
 ・そこで、今一つ葵・桂の妹背を得ればヒトイキ(人活)を悟ることになるだろう
 ・故に、この三つを知ればタツキミ(竜君)の如く神となるのだ」
・ここでトヨタマヒメが「竜君とは何ですか?」と問うと、ニニキネが直ぐに答えた
 ・「竜はヒレ、三つを知る故にウロコキミである
 ・カンツミ(上位)の存在があるという三つ(天地人)を知れば人は神となるのだ」
ニニキネの言葉を聞いたトヨタマヒメは、それより恥・怖れを言わなかった
 ・そして、ニニキネミホツヒメ(ニニキネの叔母)の御幸に伴わせて送り出すと、姫が気を留めたことに喜んだ
・また、これに応えてミホツヒメは頷き、このように言った
 ・「太上君(ニニキネ)の、心ある共感を得た君と姫は、日と月のように睦まじくなるでしょう」
・これにニニキネは笑んで、タケスミ※に「トヨタマヒメを養え」と川間の地を与えた
 ・谷を出ると、室津にカメ(船)が迎えに来ており、そこからニニキネの門出を送りだした

※賀茂神社の由来と取れる深い内容が記される

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用語解説

・タケスミ:ハテスミの子で、トヨタマヒメの弟に当たる。賀茂社の祭神である賀茂建角身命に当たると推定される

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原文(漢字読み下し)

・時(とき)に葉(は)お持(も)ち
・これ如何(いか)ん トヨタマ答(こた)え
・葵葉(あおひは)そ またこれ如何(いか)ん
・桂葉(かつらは)そ 何(いつ)れ欠(か)けるや
・また欠(か)けす

・汝(なんち)世(よ)お棄(す)て
・道(みち)欠(か)けや 姫(ひめ)は畏(おそ)れて
・欠(か)かねとも 渚(なきさ)に泳(およ)く
・嘲(あさけ)りに 腹這(はらは)ひの恥(はち)
・重(かさ)ぬ身(み)は あに上(のほ)らんや

・これ恥(はち)に 似(に)て恥(はち)ならす
・確(しか)と聞(き)け 子(こ)お生(う)む後(のち)は
・因(ちな)み絶(た)つ 七十五日(なそゐか)に治(た)す
・謹(つつ)します 更立(た)ち達(た)せす
・カツテ尊(かみ) 予(か)ねて申(もふ)すお
・覗(のそ)く恥(はち) 汝(なんち)にあらす

・竜(たつ)の子(こ)は 千年海(ちほうみ)に棲(す)み
・立達(たつた)知(し)る 千年山(ちほやま)に棲(す)み
・立(た)つ経(ふ)ると 千年里(ちほさと)に棲(す)み
・付(つ)く離(はな)る 三生(みいさ)き悟(さと)りて
・君(きみ)となる

・汝(なんち)渚(なきさ)に
・落(お)ちんとす 御種(みたね)思(おも)えは
・猛心(たけこころ) なして泳(およ)きて
・永(なか)ら得(う)る これ地生(はい)き知(し)る

・宮(みや)に立(た)ち 経(ふ)りて嘲(あさけ)り
・免(まぬか)るる これ天生(あいき)き知(し)る

・いま一(ひと)つ 葵(あおい)・桂(かつら)の
・妹背(いも)お得(ゑ)は 人生(ひとい)き悟(さと)る
・三(み)つ知(し)れは 竜君(たつきみ)如(こと)く
・神(かみ)となる

・竜君(たつきみ)如何(いか)ん

・竜(たつ)は卑(ひ)れ 三(み)つ知(し)る故(ゆえ)に
・鱗君(きみ) 上(かん)つ身存(みおに)お
・三(み)つ知(し)れは 人(ひと)は神(かみ)なり

・姫(ひめ)は恥(は)ち 怖(お)ち入(い)り言(い)わす
・ミホツ姫(ひめ) 御幸(みゆき)送(おく)りて
・ここにあり 留(とと)えは喜(よろこ)ひ
・応(こた)え留(とと)う ミホツ頷(うなつ)き

・太上君(おおゑきみ) 心(こころ)な傷(いた)め
・給(たま)ひそよ 君(きみ)と姫(ひめ)とは
・日(ひ)と月(つき)と 睦(むつ)ましなさん
・申(もふ)す時(とき) 太君(きみ)笑(え)みて
・タケスミに トヨタマ養(た)せと
・川間(かわあい)の 地賜(くにたま)わりて
・谷(たに)お出(い)て ムロツにカメの
・迎(むか)い待(ま)つ

・門出(かといて)送(おく)り

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります