現代語訳

・宮造りから葺き甍までを終えて宮が完成し、御孫のニニキネがツクバから遷宮する日が来た
 ・そのとき、ヲコヌシ(クシヒコ)がフソヰモノノベ(モノノベ25人の1部隊)を率いて門出の祝をした
 ・また、カスガ(アマノコヤネ)も馬に乗って同行し、ニニキネの御幸の守護を為した
 ・また、この日にはアスカ※から宮代人のフトタマ※が遣わされ、ニニキネを祝った(テルヒコの代理人)
君(ニニキネ)は夜間に亘って十里に到ったが、ニハリまでの道は曇り、さらにハタタカミ(雷)が鳴って垣を破った
 ・ヲコヌシ(クシヒコ)は「遷宮を民も祝っていると言うのに情けない」と言ってハハ矢を射った
 ・すると、雷がシナトベによって吹き払われたので、その隙に道を進んでいった
・御響が済むと、ヲコヌシ(クシヒコ)ニニキネに垣の破れについて告げた
 ・すると、ニニキネは「理由にもよるが、ハタタカミが垣を破った事実は重い、将来のために棄て置けない」と言った
カスガ(アマノコヤネ)は「フトマニの占いによれば、"アコケ"の仕業はウツヲカミ(ウツロヰ)と出ました」と報告した
 ・そのため、ウツヲカミの社を閉ざして これを天(アマテル)に報告した
・すると、アマテルは「情けない その社を拉げ(圧力をかけよ)」と申した
 ・これに対し、ニニキネは璽を捧げてウツヲカミヤマサ神として存続させることを願い出た
 ・しかし、アマテルの反応は悪く、これは許されなかった
・だが、ニニキネは諦めずに再び願い出て、このように申し上げた
 ・「ウツヲカミは1度背きましたが、このようなことは2度とないでしょう
 ・例えば、出雲でオホナムチも一度落ちましたが、今はヒスミノキミとして忠を尽くしています
 ・また、その子のモノヌシ(クシヒコ)も同じく忠を尽くしています
 ・この例は適切ではないかもしれませんが、ウツヲカミには後の功を立てさせます
 ・そのため、許しては頂けませんでしょうか?」
・すると、アマテルニニキネの申し出を許可して このように詔した
 ・「ウツヲカミヤマサの兄弟の末のヤナヰカクロヒとし、空守として東北(方角)の一木(柳)を居社とせよ」
・(この決定にはニニキネをはじめ、諸守も喜んだ)
 ・ヲヲコヌシ(クシヒコ)は、ニニキネに「きっと我が親のヒスミノキミも喜んでいるでしょう」と言った
 ・ウツヲカミも「守の喜び」と言って、守役を乞うた
・そこで、ニニキネは「鳴神の主の東北守はウツロヰノヲマサキミ(大将軍)とする」と命を下した
 ・これにより、ウツロヰトシノリにヤシロ(持ち場)を与えられた

【アコケ(フトマニより)】

・『央の痩けば 側屋・離屋も ハサラなせ 陽回転の 巡りあらねば』
・(主屋が穢れれば、側屋や離れ屋の地も清めよ 陽気の循環を主屋までで留めると、他所への循環は止まってしまうだろう)

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用語解説

・アスカ:テルヒコ(クシタマホノアカリ)が治める大和地方を指す
・フトタマ:テルヒコの左の臣を務める(『記紀』のフトダマに当たるが、ホツマでは立ち位置が大分異なる)
・ウツヲカミ:空(空間)を治める神霊を指し、ナルカミ(雷)を司る(ウツロヰと同じ)

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原文(漢字読み下し)

・宮造(みやつく)り 葺(ふ)き甍(いらか)まて
・皆(みな)成(な)りて 御孫(みまこ)ニニキネ
・ツクバより 移(うつ)ります日(ひ)は
・ヲコヌシの 二十五(ふそゐ)モノノベ
・膳(かしは)なす カスガ諸共(もろとも)
・乗(の)り添(そ)ひて 御孫(みまこ)の御幸(みゆき)
・守(まも)り行(い)く

・この日(ひ)アスカの
・宮代人(みやしろと) フトタマをして
・祝(いわ)わしむ

・君(きみ)夜(よ)を籠(こ)めて
・十里(とさと)来(き)て ニハリ渡(わた)りは
・掻(か)き曇(くも)り ハタタ神(かみ)鳴(な)り
・垣(かき)破(やふ)る

・ヲコヌシ曰(いわ)く
・渡座(わたまし)を 民(たみ)も祝(いは)ふに
・情(なさ)けなと ハハ矢(や)お射(い)れは
・シナトベに 吹(ふ)き払(はら)ふ時(とき)
・道(みち)を向(む)かひ 共(とも)に入(い)ります

・御饗(みあえ)済(す)み  ヲコヌシ垣(かき)の
・破(やふ)れを告(つ)く 御子(みこ)宣給(のたま)ふは
・由(ゆみ)の如(こと) あれと後(のち)ため
・棄(す)てられす

・カスガに宣(の)れは
・フトマニの アコケは仕業(しわさ)
・ウツヲ神(かみ) 時(とき)御言宣(みことのり)
・ウツヲ神(かみ) 社(やしろ)閉(と)さして
・天(あめ)に告(つ)く

・天(あ)の御言宣(みことのり)
・情(なさけ)なき 社(やしろ)拉(ひし)けと
・時(とき)御孫(みまこ) 璽(しるし)捧(ささ)けて
・後(のち)を乞(こ)ふ 天(あめ)はた悪(たあ)しく
・許(ゆる)されす

・また願(ねか)わくは
・ウツヲ神(かみ) たとひ一度(ひとたひ)
・異(こと)乱(みた)れ 更(さら)に有(あ)らんや
・オオナムチ 一度(ひとたひ)落(お)ちて
・日隅君(ひすみきみ) その子(こ)モノヌシ
・忠(まめ)おなす これには似(に)すも
・ウツヲまた 後(のち)殊立(ことた)てん
・許(ゆる)し給(たま)えや

・大御神(ををんかみ) 許(ゆる)す御言(みこと)は
・兄弟(ゑと)の末(すえ) ヤナヰカクロヒ
・空守(うつろもり) 東北(きね)の一木(ひとき)を
・居社(ゐやしろ)にせよ

・ヲヲコヌシ 御孫(みまこ)に申(もふ)す
・我(わ)か親(をや)の 日隅(ひすみ)の君(きみ)は
・喜(よろこ)はし ウツヲも守(かみ)の
・喜(よろこ)ひと 乞(こ)えは御言(みこと)そ

・鳴神(なるかみ)の 主(ぬし)東北守(きねまもり)
・ウツロヰの ヲマサ君(きみ)とそ
・年和(としの)りに やしろ賜(たま)わる

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります