現代語訳

カモヒトには、母より"ナギサタケ ウガヤ フキアワセズ"の名が与えられた
・その由縁はチクラ(磐?)によってカモが壊れてしまったことにある
 ・そのとき、トヨタマヒメをはじめ、タケスミホタカミも諸共に渚に落ちてしまった
 ・そこで溺れそうになった姫は猛き心でタツやミツチの力を得て、泳いで磯に着いた
 ・その後、釣り船でミホサキへ行き、ワニを得てキタツに着いた
・御種(孕み子)を思ってのことだったが、母のナギサ・タケの実心(本性)が現れてしまった
・松原に来たヒコホオテミが、心を躍らせながら産屋を覗いたときのこと
 ・トヨタマヒメは腹這いになり、装いも無い姿であった(具体的な姿は不明)
 ・それを見たヒコホオテミは、そっとを戸を閉めた
 ・その音に気付いた姫は「恥ずかしい」と自分の姿を恥じた
・そして、姫は弟のタケスミと共に6月の禊をして、後に産屋を出てヲニフに到った
 ・そこで御子を抱き、その顔と手を撫でて「母は今、恥じています、もう会わないでおくれ」と言った
 ・すると、姫は御子を棄てて朽木川を上り、山を越えてより3日後にワケツチの北のミツハメの社にて休んだ
・このことをミヅホに告げると、驚いて直ぐにホタカミを派遣して思い留めさせた
 ・そこでヲニフから雉(急使)が飛んでくると、ホタカミは跡を慕って姫の元に向かった
 ・朽木谷の西から南の山を越えてミツハメの社に追い着くと、返信を乞うたが音沙汰は無かった
 ・そのため、ホタカミタケスミに後を任せて急いで帰り、ミヅホに事の次第を報告した
・すると、ツクシのハテスミオトタマヒメ※に雉が飛び、それを以ってワニでニシノミヤからヤマシロに到った
 ・そこで、両名を以って再び姫に問うと「姫は今 下りて上らず、オトタマヒメを捧げ」との返事があった
 ・このため、諸共にミヅホに上って 事の次第を申し上げると、ヒコホオテミオトタマヒメを娶って后とした

<<前   次>>

用語解説

・オトタマヒメ:トヨタマヒメの妹で、ヒコホオテミの臨時の后となった。『記紀』のタマヨリヒメに当たる

<<前   次>>


原文(漢字読み下し)

・母(はは)よりナギサ
・タケウガヤ フキアワセズの
・名(な)お賜(たま)ふ

・故(ゆえ)はチクラに
・カモ破(わ)れて 姫(ひめ)もタケスミ
・ホタカミも 渚(なきさ)に落(お)ちて
・溺(おほ)るるお 猛(たけ)き心(こころ)に
・泳(およ)かせは 竜(たつ)や蛟竜(みつち)の
・力得(ちからえ)て 恙(つつか)も和(な)みの
・磯(いそ)に着(つ)く

・釣舟(つりふね)よりそ
・ミホサキの ワニ得(ゑ)てここに
・着(つ)くことも 御種(みたね)思(おも)えは
・ナギサ・タケ 母(はは)の実心(みこころ)
・現(あらは)るる

・君(きみ)松原(まつはら)に
・進(すす)み来(き)て 産屋(うふや)覗(のそ)けは
・腹(はら)這(は)ひに 装(よそ)ひ無(な)けれは
・戸臍(とほそ)引(ひ)く 音(おと)に寝覚(ねさ)めて
・恥(はつ)つかしや

・弟(おと)タケスミと
・六月(みなつき)の 禊(みそき)して後(のち)
・産屋(うふや)出(て)て ヲニフに到(いた)り
・御子(みこ)抱(いた)き 御面(みめ)・御手(みて)撫(な)てて
・母(はは)は今(いま) 恥(は)ち返(かえ)るなり
・まみゆ折(おり) もかなと棄(す)てて
・朽木川(くちきかわ) 上(のほ)り山越(やまこ)え
・やや三日(みか)に ワケツチの北(ね)の
・ミツハメの 社(やしろ)に休(やす)む

・この由(よし)お ミヅホに告(つ)けは
・驚(おとろ)きて ホタカミおして
・留(とと)めしむ ヲニフの雉(きち)の
・ひた飛(と)へは 跡(あと)お慕(した)ひて
・朽木谷(くちきたに) 西(にし)より南(みなみ)
・山越(やまこ)えて ミヅハの宮(みや)に
・追(お)ひ着(つ)きて 乞(こ)えと返(か)え無(な)て
・タケスミに 含(ふく)め留(とと)めて
・馳(は)せ帰(かえ)り

・返言(かえこと)なせは
・雉(きし)飛(と)ひて 告(つ)くるツクシの
・ハテスミと オトタマ姫(ひめ)と
・ワニ上(のほ)り 西(にし)の宮(みや)より
・山背(やましろ)に 到(いた)りて問(と)えと
・姫(ひめ)は今(いま) 下(お)りて上(のほ)らす
・オトタマお 捧(ささ)けとあれは
・諸共(もろとも)に 上(のほ)り申(もふ)せは
・妹(いもと)召(め)す

<<前   次>>

現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります