現代語訳

アシナツチ・テニツキの夫婦には、最後に一人 イナタヒメ※が残っていた
 ・しかし、オロチに催促されるのも時間の問題だった
 ・そのため、タラチネ(父=アシナツチ)はイナタヒメの手足を撫でながら日々心を痛めていた
・そんな時、アシナツチの前にソサの尊(ソサノヲ)が現れた
 ・ソサの尊はカントヒ(尊問ひ)にて「すまぬが、そなたの姫を頂こうと思う」と丁寧に申し上げた
 ・すると、アシナツチは「御名をお聞かせ願えますか」と返答した
 ・そこで、ソサの尊は「陽陰(アマテル)の弟である」と申し上げた
 ・すると、アシナツチも承諾し、晴れてイナタヒメとの婚姻が成立した

※以下は和歌における「掛詞」の技法で二重の意味が含まれていると推測される

【訳文その一】

・病気による高熱で苦しい時、袖脇を裂いて風を入れれば熱が冷めて快くなる
 ・これが童の袖の脇開けである

【訳文その二】

ソサノヲの登場は、アシナツチの心配の熱を冷ます風のように快いものであった
 ・それは、まるで童の袖の脇開けのようであった

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用語解説

・イナタヒメ:アシナツチ・テニツキの娘であり、ソサノヲの妻となった。『記紀』でいうクシナダヒメに当たる

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原文(漢字読み下し)

・残(のこ)る一人(ひとり)の
・イナタ姫(ひめ) これも食(は)まんと
・タラチネは 手撫(てな)て足撫(あしな)て
・痛(いた)む時(とき) ソサの尊(みこと)の
・尊問(かんと)ひに 明(あか)らさまにそ
・答(こた)えけり

・姫(ひめ)お得(ゑ)んやと
・礼問(いやと)いに 御汝(みな)は誰(たれ)そと
・裏問(うら)えは 陽陰(あめ)の弟(おと)と
・露(あら)はれて 契(ちき)りを結(むす)ふ
・イナタ姫(ひめ)

・病(や)める炎(ほのほ)の
・苦(くる)しさを 袖脇(そてわき)裂(さ)きて
・風(かせ)入(い)れは 炎(ほのほ)も冷(さ)めて
・快(こころ)く 童(わらべ)の袖(そて)の
・脇明(わきあ)けそ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります