現代語訳

・その後、ヒメキミ※(アマノコヤネの妻)が孕むと、これを天(中央政府)に報告した
 ・アマテルは詔をしてコモリをヒメキミの元に遣わした
コモリが来ると、ヒメキミコモリにミタネ(御種)を生む方法を請うた(妊娠の原理)
 ・コモリは「このコモリも、ヒメキミイロセ(夫のアマノコヤネ)に習ったのですが」と言った
 ・ヒメキミは「違うのです、夫に問うても"他の者に聞いてくれ"と言われそうなので、こうして聞いているのです」と言った
・事情を知ったコモリは、早速 御種文を教えることにした
 ・「天地がまだ分かれていない頃、神による"初の一息"により、まるで水に油が浮かぶように陰陽に分かれました
  ・まず、陽が上って天(空気)となり、後に陰が下がって地泥となり、それが埴・水に分かれました
  ・埴は山となり、水は海となりました
  ・また、陽の空が動いて風が起こり火と化しました
 ・背(陽・夫)のムナモトを日として丸め、天の近く(赤道)を回って陽(日潤・空風火)を配りました
  ・妹(陰・妻)のミナモトは凝り固まって月となり、地に近い(白道)ため、陰(夜潤・水埴)を配りました
  ・この空・風・火・水・埴の5つの要素が交わって人となりました
 ・その後、妹背が結婚して子を生むようになりました
  ・ヲ(男)がハ(地)に向い、メ(女)はア(天)に向って婚ぐ時、カリノシシナミ※はホネアブラ(精液)となります
  ・されば、交わりのカネノニシ(適の和霊)が熟し、交わりのヨカネノニチ(好適の和霊)がトワタ(迸た)します
  ・そして、チチノカリナミ※タマシマ※へ押し迫ると、チナミ(霊・波)合うのです(受精卵となる)
  ・昼は"ニ(和霊)"が優勢となって左に上り、夜は"シ(精波)"が優勢となって右に下ります
  ・翌日より2回転、3回転と増えていき、30日目には30回転となります
  ・それは33日目まで増え続けますが、以降は弛り緩んで減衰し、3日間は"タラム"という母体の休暇時期に入ります
 ・男のイキス(呼吸)は13,680回、女のイキスは13,186回です
  ・御種を得た母は息を増し、初日は360(女児は347)回、翌日は720回、3日目は1080回、30日目には10,800回となります
  ・また、38日目には13,680回、元と合せて約26,846回(計算上は26866となる)まで増えて止まります
  ・受精卵の回転は、2ヵ月満ちれば3日間は加速し、皺がさらに増えます(卵割を指す)
  ・これは"キサラ(キサラギ)"という母体の状態です
  ・64日目には64回転に極まって、その合計は1080回(計算上は2080)となります
  ・そして、遂に種がオノコロの胞衣となり、胎児はへその緒を軸に水車のようになります
  ・以後、徐々に肉を付けて、翌日より63回、次に62回と、回転数も減って来ます
 ・3ヵ月目には39回となり、そこで3日間休みます
  ・この際、胎児に端(頭・頸・胸・手・足)が成って益々勇みますので、母体は益々謹まなければなりません
 ・4ヵ月目には、胎児は熟し潤いますので、母体は謹んでください
 ・5ヵ月目には元の一回転となり、呼吸の数が26,846回となりますので、母体に腹帯をして謹んでください
  ・アモト(ムナモト)に招くのがアラミタマ※(荒神霊)です
  ・日のアラミタマ(荒神霊)、月のニコタマ※(和霊)、父母の穂の3つが交わってココロイキ(心意気)となります
  ・この心意気が人の本質であり、端(頭・頸・胸・手・足)を通って露(羊水)が溢れます
 ・6ヵ月目には露は乾き、へその緒からチシル(血液)が通い始めます
 ・7ヵ月目には血が煮られヰイロハニ(五色埴)となり、臓腑となってアフミ(中央)となります。
  ・この時期にも母体を謹ませなければなりません
 ・8ヵ月目には、十三端(13の部分)が出来あがります
  ・なお、母体をハハと呼ぶのは、この時期に由来します
  ・"ハハ"は空音(自然の音)であり、また"タタ"はハルノソラネ(日潤の拡散)を母体に生んで養育することに因みます
  ・また、"カカ"はアキノネ(成熟の音)であり、慈しんで育成する本能に因みます
  ・一方、父は"チ・テ・ト"のヲシテです
  ・父母は天(陽)を地(陰)に編んで連なりミヤビを結びます(性交を指す)
  ・これが、子を結び育てる"テテ・タタ"で、契り親しむのが"トト・カカ"です
 ・9ヵ月目には胎児に見目(容姿)・声が備わります
 ・10ヵ月目には胎児がクライ(座位)し、生まれる準備を整えます
 ・そして、12ヵ月目に月が満ちて生まれます
 ・御種とは、こういうものなのです」

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用語解説

・ヒメキミ:タケミカツチの一人娘で、アマノコヤネの妻となる。斎名は無いためヒメと呼ばれ、区別のために君・上が付く
・カリノシナナミ:陰茎から発射される陽エネルギーを指す
・チチノカリナミ:陰茎から発射される陽エネルギーを指す
・タマシマ:女陰を指す
・アラミタマ:陽(日)の霊気を指す
・ニコタマ:陰(月)の霊気を指す

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原文(漢字読み下し)

・いつしか姫(ひめ)も
・孕(はら)む由(よし) 天(あめ)に告(つ)くれは
・御言宣(みことのり) コモリにこれを
・訪(と)はしむる

・ヒメ君(きみ)会(あ)ひて
・御種(みたね)生(う)む 御機(みはた)を請(こ)えは
・コモリたも 御姫(みめ)の愛背(いろせ)に
・習(なら)ひきと

・姫(ひめ)は返(かえ)して
・いと異(いな)なや 愛背(いろせ)に問(と)わは
・彼方(あち)もまた 他所(よそ)に問(と)わんと
・思(おも)ふなり 心(こころ)迷(まよ)えは
・教(をし)ゑ請(こ)ふ

・ここにコモリの
・御種文(みたねふみ)

・天地(あめつち)いまた
・分(わ)かさるに 初(うい)の一息(ひといき)
・まとかにて 水(みつ)に油(あふら)の
・陰陽(めを)分(わ)かれ 陽(を)まつ上(のほ)りて
・天(あめ)となり 陰(め)は後(のち)下(くた)り
・地泥(くにとろ)の 埴(はに)・水(みつ)分(わ)けて
・埴(はに)は山(やま) 水(みつ)は海(うみ)成(な)り

・陽(を)の空(うつほ) 風(かせ)と動(うこ)きて
・火(ほ)と化(は)ける 背(をせ)の宗元(むなもと)
・日(ひ)と丸(まろ)め 天(あ)近(ちか)く回(めく)り
・陽(を)に配(くは)る

・妹(いも)の鄙元(みなもと)
・月(つき)と凝(こ)る 地(はに)に近(ちか)き故(ゆえ)
・陰(め)に配(くは)り

・空(うつほ)・風(かせ)・火(ほ)と
・水(みつ)・埴(はに)の  五(ゐつ)つ交(まし)わりて
・人(ひと)となる 後(のち)は妹背(いもをせ)
・婚(とつ)き生(う)む

・男(を)は地(は)に向(むか)ひ
・婚(とつ)く時(とき) カリの精波(ししなみ)
・髄油(ほねあふら)

・女(め)は天(あ)に向(むか)い

・交(ましわ)りの 適(かね)の和霊(にし)熟(な)き
・交(ましわ)りの 好適(よかね)の和霊(にち)か

・迸(とわ)たなす

・精(ちち)のカリ波(なみ)
・玉島(たましま)え 迫(しは)する時(とき)に
・霊(ち)・波(なみ)合(あ)ひ

・昼(ひる)は和上(にうえ)に
・左上(ひたのほ)り 夜(よる)は精上(しうえ)に
・右下(みきくた)り

・翌日(あす)二回(ふためく)り
・三回(みめく)りと 三十日(みそか)には三十(みそ)
・三十一(みそひ)・二(ふ)・三(み) 三日(みか)弛(た)り緩(ゆる)む
・タラムとて 母(はは)の謹(つつし)み

・男(を)のイキス 万三千六百八十(よろみちむやそ)
・女(め)のイキス 万三千百八六(よろみちもやむ)

・御種(みたね)得(ゑ)て 母(はは)に増(ま)す息(いき)
・三百六十(みもむそ)の 翌日(あす)は七百二十(なもふそ)
・三日(みか)千八十(ちやそ) 三十日(みそか)万八百(よろやも)
・三十八日(みそやか)に 万三千六百八十(よろみちむやそ)
・元(もと)と増(まし) 二万六千八百(ふよろむちやも)
・四十六度(よろむたひ) 増(ま)し止(と)まりて

・回転(みめく)りは 二月(ふつき)至(いた)れは
・三日走(みかはし)り 皺(しわ)さらに切(き)る
・キサラとて 母(はは)の謹(つつし)み

・六十四日(むそよか)は 六十四(むそよ)回(めく)りに
・極(きわ)まりて 回転(みめく)りすへて
・千八十(ちやそ)なり

・遂(つい)に種(たね)なる
・オノコロの 胞衣(ゑな)の臍(へそ)の緒(を)
・河車(かわくるま) 弥々肉(ややしし)お盛(も)り
・回(めく)り減(へ)る

・翌(あす)六十三度(むそみたひ)
・次(つき)六十二(むそふ) 遅(おそ)り回(めく)りて
・三月(みつき)には 三十九(みそこ)となれは
・三日(みか)休(やす)む 満(みと)り端成(はなな)り
・弥(やよ)勇(いさ)む 弥(やよ)も謹(つつし)み
・四月(よつき)には 熟(この)み潤(うる)うも
・謹(つつし)みよ

・五月(ゐつき)は元(もと)の
・一回(ひとめく)り 祝万六千(いはふよろむち)
・八百四十六(やもよそむ) 腹帯(はらおひ)の妹(ゐも)
・謹(つつし)みよ

・陽元(あもと)に招(まね)く
・荒神霊(あらみたま) 月(つき)の和霊(にこたま)
・父母(たら)の穂(ほ)と 三(み)つ交(まし)はりて
・心意気(こころいき) 成(な)りて瑞通(みつか)ふ
・露(つゆ)溢(あふ)れ

・六月(むつき)至(いた)れは
・乾(かわ)く故(ゆえ) 臍(ほそ)の緒(を)管(くた)に
・血汁(ちしる)通(か)ふ

・七月(なつき)血(ち)お熟(に)て
・五色埴(ゐいろはに) これ臓(くら)・腑(わた)と
・アフミなす ここも謹(つつし)み

・八月(やつき)にて 十三端(そみは)成果(なりは)の
・果(は)なる時(とき) 母(はは)の謹(つつし)み
・これなるそ

・ハハは空音(うつほね)
・またタタは 春(はる)の空延(そらね)を
・地(は)に編(あ)みて 慈(いた)くに足(た)れは
・タタと言(い)ふ

・カカは秋(あき)の音(ね)
・慈(いつく)しに 掲(かか)けあかせる
・心指(こころさ)し

・父(ちち)はチ・テ・トの
・ヲシテなり

・父母(ちちはは)天(あめ)お
・地(は)に編(あ)みて 連(つら)なるミヤビ
・テテ・タタよ

・契(ちき)り親(した)しむ
・トト・カカそ

・九月(こつき)見目(みめ)・声(こゑ)
・備(そな)わりて 十月(とつき)座位(くらい)し
・十二月(そふつき)は 月満(つきみ)ち生(う)まる
・御種(みたね)これなり

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります