現代語訳

・(ヒスミを?)一人で治めたオホナムチ※は自らを褒めて こう言った
 ・「葦の根さえ基から祓い除き、イワネコ(岩根こ)も皆伏し倒した
 ・このように治める者は、幾万年経っても他に現れていない」
・すると、海原から光るものが現れてこう言った
 ・「我あればこその汝である、故に汝はおおよそに成功したのだ」
オホナムチが、その光に素性を尋ねると、はこう答えた
 ・「我は汝のサキミタマ※クシヰワサタマ※である」
オホナムチは疑って「さて、そのような者は知らぬが、祀るサキタマはどこに住む?」と返した
 ・すると、光は「否、神は住まず」と答えた
 ・オホナムチは「ならば、汝をアオカキヤマに住ませようと思う」と言い、青垣山に宮を造ってそこに祀った
・その後、神(クシヰワサタマ)オホナムチに助言した
 ・「子無きの故、やがて乱れることになろう
 ・されば、コトシロヌシの兄弟の子(フキネ)クシミカタマを乞い受けて、オオモノヌシの嗣子とするべし」
・オホナムチがこれをフキネに伝えると、フキネは神の教えに従って、ミモロの傍にアオカキトノを造り上げた
 ・その後、ツミハに養子を乞うてクシミカタマを我が子と為し、妻のサシクニワカメと共に青垣殿に住まわせた
 ・そして、フキネはオオモノヌシとして筑紫を治めた
フキネが果てる時、クシミカタマがオオモノヌシを引き継ぐことになった
 ・フキネの臨終の際に妻子が駆け付けると、フキネはこのような遺言を残した
 ・「このムラクモツルギは、生まれてくる君の御子(タケヒト)の祝として捧げるべし」
 ・その後、フキネは夫婦共々に神となった
フキネの遺骸はヤスに納められ、喪祭の後にクシミカタマにツクシヲシカを任ずる詔が告げられた
 ・この後、クシナシも神となった(亡くなった)
・そのため、クシミカタマは母のタマクシヒメに御使の辞任を乞われて、これを受け入れた
 ・故に(ウガヤは)ツクシへの御幸を乞われた

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用語解説

・オホナムチ:ソサノヲとイナタヒメの五子で、出雲建国後初の子。『記紀』でいうオオナムチに当たるが、微妙に異なる
・サキミタマ:人の上位神霊を指すとされる(肉体に宿っていない霊とも)
・クシヰワサタマ:オホナムチの前に現れたサキミタマ。『古事記』でいう"海を照らしてやってくる神"に当たる

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原文(漢字読み下し)

・一人(ひとち)治(おさ)むる
・オオナムチ 自(みつか)ら褒(ほ)めて
・葦(あし)の根(ね)さ 基(もと)より散(あ)らひ
・岩根(いわね)こも 皆(みな)伏(ふ)し靡(なひ)け
・治(をさ)むるは 弥万年(やよほ)に誰(たれ)か
・また現(あら)らん

・海原光(うなはらひかり)
・現(あらは)れて 我(われ)あれはこそ
・汝(なんち)その おおよそに成(な)す
・功(いたはり)そ オオナムチ問(と)ふ
・汝(なんち)誰(たれ)そ 我(われ)は汝(なんち)の
・先神霊(さきみたま) 貴霊業霊(くしゐわさたま)

・さて知(し)りぬ 纏(まつ)る先霊(さきたま)
・とこに住(す)む 否(いや)神(かみ)住(す)ます
・汝(なんち)おは 青垣山(やま)に
・住(す)ませんと 宮(みや)造(つく)りして
・そこに居(お)れ

・子無(こな)きか故(ゆえ)に
・乱(みた)るるそ コトシロヌシか
・兄弟(ゑと)の子(こ)の クシミカタマお
・乞(こ)い受(う)けて 嗣(つき)となすへし

・神教(みをし)えに ミモロの傍(そは)に
・殿(との)成(な)して 乞(こ)えは賜(たま)はる
・儲(もふ)けの子(こ) クシミカタマと
・我(わ)か妻(つま)の サシ国別姫(くにわかめ)
・諸共(もろとも)に 住(す)ませて主(ぬし)は
・ツクシ治(た)す

・ひたるの時(とき)に
・これお継(つ)く 母子(ははこ)到(いた)れは
・遺(のこ)し言(こと) このムラクモは
・生(う)れませる 御子(みこ)の祝(いわ)ひに
・捧(ささ)けよと 言(い)いて夫婦(もをせ)
・神(かみ)となる

・ヤスに納(おさ)めて
・祭(まつ)る後(のち) ツクシ御使(をしか)の
・御言宣(みことのり) 後(のち)にクシナシ
・神(かみ)となる 母(はは)に乞(こ)われて
・御使(をしか)棄(す)つ 故(かれ)にツクシの
・御幸(みゆき)乞(こ)ふ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります