現代語訳

タカテルヒメ※の兄のタカヒコネは天(中央政府)に上り、アメワカヒコ※の喪屋に訪れる許可を得た
 ・なお、タカヒコネの姿はアメワカヒコとウルリワケエズ(そっくり)であったという
 ・そのため、喪屋を訪れた際、アメワカヒコのシム(身内)の者に「君が蘇った」と勘違いされた
 ・そして、たちまち寄りかかられて「8年たまゆら(8年ぶりだな)」と纏わられた
 ・アチスキタカヒコネ※は死者と間違えられたことに激怒して こう言った
  ・「友人だから遠方から遥々訪れたというのに、私を死者と間違えるとは なんと汚らわしい、全く腹が立つ」
 ・そう言い放つと喪屋を斬り臥せ、穢れを祓うようにカント(神戸・葬儀場)を去ろうとした
  ・この時に用いた剣を"アオハカリ(汚穢別り)の剣"という
・この際、かつて中山道を開いたカナヤマヒコ※の孫娘であるシタテルヒメ(オクラヒメ※)が怒りを諌めようとした
 ・そこで、ミヂカウタ(短歌)を詠んで、タカヒコネを諭した
  ・『美なるや 復棚機の 促せる 珠のミスマル ミスマルの 穴珠逸み 誰に二輪 垂らすアチスキ タカヒコネぞや』
  ・(麗しき果てなき天の川の身を飾る珠(星)の集まりは貴方と私、貴方は怒り、私はときめきで沸き踊る、誰と御統を垂らしましょう アチスキタカヒコネ殿?)
タカヒコネは、この歌の続きが分かったため、怒りと太刀を収めた
 ・そして、女男のミヤビ(和合)を諭そうと返歌を歌った
  ・『天下がる ヒナツメの意は ただ背訪ひ しかはかたふち 片淵に 網張り渡し 群寄しに 寄し選り好い しかはかたふち』
  ・(都から遠く下る鄙詰め(鄙つ女)の意は、ただ友を弔うこと(男に迫ること)、そなたは不公平、魚が集る片淵に網を張り渡せば群衆が寄せる、寄せて選り好むそなたは不公平)
・この歌は、後の縁の"アフウス(合ふ失す=ツクバ)"のカモイト(離糸)を結ぶ、ヒナフリ※(歌のやりとり)となった

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用語解説

・タカテルヒメ:オホナムチとタケコの娘で、アメワカヒコの妻。『記紀』ではオクラヒメと同一視される
・アメワカヒコ:アメクニタマの子で、オクラヒメ(二代目シタテルヒメ)の兄。『記紀』でいう、アメノワカヒコに当たる
・アチスキタカヒコネ:オホナムチとタケコの二男。『記紀』でいうアヂスキタカヒコネに当たる
・カナヤマヒコ:アマクニタマの父で、美濃国のクニカミ。『古事記』でいうカナヤマヒコに当たる
・オクラヒメ:アマクニタマの娘で、アメワカヒコの妹。『記紀』ではタカテルヒメと同一視される
・ヒナフリ:歌のやりとり、歌の応酬、贈歌と返歌といった意味合いを指す

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原文(漢字読み下し)

・タカテルの兄(あに)
・タカヒコネ 天(あめ)に上(のほ)りて
・喪(も)お訪(と)えは この守(かみ)姿(すかた)
・ワカヒコに 瓜(うるり)分(わ)け得(ゑ)す
・シムの者(もの) 君(きみ)は生(い)けると
・寄(よ)ちかかり 八年(やほ)たまゆらと
・惑(まと)ふ時(とき) 怒(いか)るアチスキ
・タカヒコネ

・友(とも)なれはこそ
・遠方(おち)に訪(と)ふ 我(われ)を亡(な)き身(み)に
・誤(あやま)つは あら穢(けか)らしや
・腹立(はらた)ちと 喪屋(もや)斬(き)り臥(ふ)せる
・アオハカリ 放(さ)けて神戸(かんと)を
・去(さ)らんとす

・昔(むかし)中山(なかやま)
・道(みち)開(ひら)く カナヤマヒコの
・孫娘(まこむすめ) シタテル・オクラ
・タカヒコの 怒(いか)り融(と)かんと
・短(みち)か歌(うた) 詠(よ)みて諭(さと)せり

・美(あめ)なるや 復棚機(おとたなはた)の
・促(うなか)せる 珠(たま)のミスマル
・ミスマルの 穴珠(あなたま)逸(や)み
・誰(た)に二輪(ふたわ) 垂(た)らすアチスキ
・タカヒコネそや

・この歌(うた)に 続(つつ)きも知(し)れり
・タカヒコも 怒(いか)り緩(ゆる)めて
・太刀(たち)収(おさ)め 女男(みと)のミヤビを
・諭(さと)さんと 応(こた)えの歌(うた)に

・天下(あまさ)かる ひなつめの意(い)は
・たた背(せ)訪(と)ひ しかはかたふち
・片淵(かたふち)に 網(あみ)張(は)り渡(わた)し
・群寄(めろよ)しに 寄(よ)し選(よ)り好(こね)い
・しかはかたふち

・この歌(うた)は 後(のち)の縁(ゑにし)の
・合(あ)ふ失(う)すの 離糸(かもいと)結(むす)ふ
・ひなふりはこれ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります