現代語訳

・時に橿原皇(タケヒト)のミヨアラタマは年サナト(上鈴58年)に始まった
・初日サヤヱ(元旦)
 ・ウマシマチ※はトクサタカラ(十種宝)を奉った
 ・また、アメノタネコは上の代のフルコト(振言)を記して奉った
 ・そして、ナナクサミソ、ドンドホ、カミアリカユも行われた
・サアヱ(1月20日)
 ・星の使のアメトミは別雷宮の剣を持ち、月の使のアタネは河合宮の鏡を持って上がった
 ・君はタカミクラにて褥九重、アマノタネコは褥三重、クシミカタマは褥二重に座した
 ・日の神使のミチヲミミヤコドリ※を歌い、君は三重に下りて聞いた
  ・『陽陰を束ねて日月なすアマスヘラギのモロハトミはカスガコモリ、君と臣の心を一つに都鳥となす
  ・形はヤタミ、頭は君、鏡と剣で左右の翼、モノノベは足である
  ・鏡臣が尽き滅べば民は離れ、恵みの日月も世に留まらず
  ・剣臣が尽き滅べばモノノベは破れ、世を奪われる
  ・ヤタ臣(鏡臣)は、生い繁る春の民業を鑑みる目である
  ・垣臣(剣臣)は汚曲を枯らし、モノノフの力を守る手である
  ・これ故に、三種を分けて授ける
  ・三種宝は"長く一つに和る"由を文に記し、御手から文を御孫に授ける
  ・セオリツヒメは御鏡を持ってカスガに授けた
  ・ハヤアキツヒメは御剣を持ってコモリに授けた
  ・三度 敬って皆受ける、ヤマトヒツキのミヤコトリかな』
 ・この後、日の臣(ミチヲミ)はシルシノミハコを奉った
 ・また、月の臣(アタネ)は鏡を、星の臣(アメトミ)は八重垣を持ち、アメタネコクシミカタマに授けた
 ・君・臣が元の褥を敷けば、臣・百司がコトホキをし、万歳を歌った
 ・そして、御鏡はヰソスズヒメに、八重垣はアヒラツヒメに、御璽は君の身に添えられて、三種とも内つの宮に納められた
 ・これがハラミノタメシの内宮と称える基となり、御飾りを民に拝ませた
・11月
 ・天ユキ・地スキの宮を造り、モトアケアワのカミマツリ(大嘗会)を催行した
 ・この際、タネコ・クシミカタマは左右にあって"ミケナヘマツリモフスヲミ(神饌供え祭り申す臣)"となった
 ・また、ウマシマチはモノノベと共に門を守り、ミチヲミクメと共に御垣守となった
 ・そして、カンノトコトをインヘトミ(アメトミ)が司った

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用語解説

・ウマシマチ:ニギハヤヒとミカシヤヒメの子で、十種神宝を献上した功績によって物部の姓を賜る
・ミヤコドリ:ニニキネの三種宝受領の様子を語った歌(転じて皇位に就くことを意味する)

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原文(漢字読み下し)

・時(とき)に橿原(かしはら)
・皇(すへらき)の 御代(みよ)新玉(あらたま)の
・年(とし)サナト 初日(はつひ)サヤヱに
・ウマシマチ 十種宝(とくさたから)お
・奉(たてまつ)る アメノタネコは
・上(かみ)の代(よ)の 振言(ふること)記(しる)し
・奉(たてまつ)る 七草(ななくさ)みそも
・ドンド火(ほ)も 神(かみ)現(あ)り粥(かゆ)も
・行(ゆ)われ

・サアヱ日継(ひつ)きと
・アメトミは 別雷宮(わけつちみや)の
・剣(つるき)持(も)ち アタネは鏡(かかみ)
・持(も)ち上(のほ)る 君(きみ)高御座(たかみくら)
・褥九重(しとねこゑ) アマノタネコは
・褥三重(しとねみゑ) クシミカタマは
・褥二重(しとねふゑ) 日(ひ)の臣(とみ)歌(うた)ふ
・都鳥(みやことり) 三重(みゑ)下(お)りて聞(き)く

・陽陰(あわ)お足(た)す 和皇(あますへらき)の
・両羽臣(もろはとみ) カスガとコモリ
・君(きみ)・臣(とみ)の 心(こころ)一(ひと)つに
・都鳥(みやことり) 形(かたち)は八民(やたみ)
・頭(くひ)は君(きみ) 鏡(かかみ)と剣(つるき)
・左右(まて)の羽(はね) モノノベは足(あし)

・鏡臣(かかみとみ) 尽(つ)き滅(ほろ)ふれは
・民(たみ)離(はな)れ 日月(ひつき)踏(ふ)まれす
・剣(つるき)臣(とみ) 尽(つ)き滅(ほろ)ふれは
・モノフ割(わ)れ 治(よ)お奪(うは)はるる

・ヤタ臣(とみ)は 繁生(そろを)う春(はる)の
・民(たみ)業(わさ)お 鑑(かんか)みる目(め)そ
・垣臣(かきとみ)は 汚曲(よこま)お枯(か)ら
・モノノフの 力守(ちからも)る手(て)そ

・この故(ゆえ)に 三種(みくさ)お分(わ)けて
・授(さつ)くるは 永(なか)く一(ひと)つに
・和(な)る由(よし)お 文(あや)に記(しる)して
・御手(をて)つから 文(ふみ)お御孫(みまこ)に
・授(さつ)けます セヲリツ姫(ひめ)は
・御鏡(みかかみ)お 持(も)ちてカスガに
・授(さつ)けます ハヤアキツ姫(め)は
・御剣(みつるき)お 持(も)ちてコモリに
・授(さつ)けます 三度(みたひ)敬(うやま)ひ
・皆(みな)受(う)くる 和日月(やまとひつき)の
・都取(みやこと)りかな

・日(ひ)の臣(とみ)は 璽(しるし)の御筥(みはこ)
・奉(たてまつ)る アタネは鏡(かかみ)
・アメトミは 八重垣(やゑかき)持(も)ちて
・アメタネコ クシミカタマに
・授(さつ)くなり 君(きみ)・臣(とみ)元(もと)の
・褥敷(しとねし)く 臣(とみ)・百司(ももつかさ)
・言祝(ことほき)し 万歳(よろとし)歌(うた)ふ

・御鏡(みかかみ)は ヰソスズ姫(ひめ)に
・八重垣(やゑかき)は アヒラツ姫(ひめ)に
・御璽(しるし)は 君(きみ)の身(み)に添(そ)え
・三種(みくさ)とも 内(うち)つの宮(みや)に
・納(をさ)めます ハラミの例(ためし)
・内宮(うちみや)と 称(たた)ゆ基(もと)なり
・御飾(みかさ)りお 民(たみ)に拝(おか)ませ

・十一月(ねのつき)に 天(あ)ユキ・地(わ)スキの
・宮(みや)造(つく)り 元明陽陰(もとあけあわ)の
・神祭(かみまつり) タネコ・クシタマ
・左右(まて)にあり 神饌(みけ)供(な)へ祭(まつ)り
・申(もふ)す臣(とみ) ウマシモノベと
・門(と)お守(まも)る ミチヲミクメと
・御垣守(みかきもり) 上宣言(かんのとこと)は
・斎瓮臣(いんへとみ)

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります