現代語訳

・その後、ワカヒメイサワ宮に居る時、紀州の稲田に蝕虫(ホオムシ※)が発生した
 ・これによって稲田が被害を受け、その現状がイサワ宮のアマテルに告げられた
アマテルアメノマナヰ※に御幸した後、ムカツヒメ※が惨状を嘆く紀州の民の元に向かった
 ・そこで田の東に立って、オシクサ(草の扇)を扇いでワカヒメの歌(和歌)を詠んで祓いの儀式を行った
 ・これによって、田からホオムシが去って行った
ムカツヒメは、周りに30名の侍女を据えて、その各々に祓いのワカを歌わせ、害虫を祓った
 ・以後、このワカヒメの歌は「ワカの呪い(まじない)」と呼ばれるようになった
ワカのまじないとは このようなものである
 ・『種 畑種 大麦 小麦 盛豆(サカメ) 大豆 小豆らの 繁葉も蝕めぞ 虫も穢 退む』
  ・[たねはたね うむすきさかめ まめすめらのそろはもはめそ むしもみなしむ]
  ・(作物の種、大麦・小麦・盛豆・大豆・小豆らの、繁葉を蝕む虫害を退ける)
 ・これを360回歌って鳴り轟かせれば、害虫は飛び去って西の海に去っていく
 ・そして、穢れを払ってソロ※に実る(稲が繁栄する)
・こうして、ワカのまじないは「ヌバタマの世の糧を得る御宝」として重宝された
・稲田から害虫が去ったことで喜んだ紀州の民は、キシヰ国に太陽の前宮とタマツ宮を建立した
 ・そして、太陽宮は紀州の国懸(政庁)となった
 ・また、タマツ宮にはワカヒメが座し、薨去した後にはワカヒメの霊を祀る宮となった
・そして、この地は枯れた稲をも若返らせる沸の歌より、ワカノクニ※(沸の国)と称された

<<前   次>>

用語解説

・ホオムシ:作物を食い荒らす害虫で、イナゴの類と推定される(一部の地域ではカメムシを指す)
・アメノマナヰ:天橋立の北端を辺りを指すと推定され、ホツマツタヱではトヨケとアマテルの墓所があるとされる
・ムカツヒメ:アマテルの内宮(正妻)であり、セオリツヒメ、ホノコとも呼ばれる
・ソロ:主に農作物を指す(特に稲)
・ワカノクニ:紀の国(紀州)の別名(和歌山の由来とも考えられる)

<<前   次>>


原文(漢字読み下し)

・然(しか)る後(のち) イサワの宮(みや)に
・侍(はへ)る時(とき) キシヰの稲田(いなた)
・蝕虫(ほをむし)に 傷(いた)むを嘆(なけ)き
・ある形(かたち) 告(つ)ぐるイサワの
・大御神(ををんかみ) 天(あま)のマナヰに
・御幸(みゆき)後(あと)

・民(たみ)の嘆(なげ)きに
・ムカツ姫(ひめ) 急(いそ)ぎキシイに
・行(ゆ)き翻(ひら)らき

・田(た)の東(き)に立(た)ちて
・押草(おしくさ)に 扇(あほ)くワカ姫(ひめ)
・歌(うた)詠(よ)みて 祓(はら)ひ給(たま)えば
・虫(むし)去(さ)るを

・ムカツ姫(ひめ)より
・この歌(うた)を 三十侍(みそめ)お左右(まて)に
・たたつませ 各々(おのおの)共(とも)に
・歌(うた)わしむ 厭虫(いなむし)祓(はら)ふ
・ワカのまじない

・種(たね)畑種(はたね) 大麦小麦(うむすき)盛豆(さかめ)
・大豆小豆(まめすめ)らの 繁葉(そろは)も蝕(は)めぞ
・虫(むし)も穢(みな)退(し)む

・繰(く)り返(かえ)し 三百六十歌(みもむそうた)ひ
・響動(とよ)ませば 虫(むし)飛(と)び去(さ)りて
・西(にし)の海(うみ) さらり蝕(むし)去(さ)り
・穢(ゑお)を祓(はら)ひ やはり若(わか)やぎ
・甦(よみかえ)る 繁(そろ)に実(みの)りて
・ヌバタマの 世(よ)の糧(かて)を得(え)る
・御宝(おんたから)

・喜(よろこ)ひ返(かえ)す
・キシヰ国(くに) 太陽(あひ)の前宮(まゑみや)
・タマツ宮(みや) 造(つく)れば安(やす)む
・太陽宮(あひみや)お 国懸(くにかけ)となす

・ワカ姫(ひめ)の 心(こころ)を留(とと)む
・タマツ宮(みや) 枯(か)れたる稲(いね)の
・若返(わかかえ)る 沸(わか)の歌(うた)より
・沸(わか)の国(くに)

<<前   次>>

現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります