現代語訳

・(カスガは続けた)
 ・「来世を思えば、戒めが無ければ乱れるのが道理です
 ・ハタレマのように財を集めた末に消えるのはススクラ※(鈴暗)と言います
 ・反面、世に在る内に欲を離れることはススカ※(鈴明)と言います」
・この時、チチヒメが垂れから出てカスガに問うた
 ・「私の斎名に"スズカ"とあります
 ・君から賜ったものの意味が分かっておりません
 ・今、その意味を説いてください」
カスガは答えて言った
 ・「鈴とは、マサカキ(真榊)の穂末が伸び、年に半寸の6万穂がなります
 ・欲を捨て去ればススカ(先は明るく)、欲を満たせば末は消えるでしょう」
・そのとき、カルキミが進み出て「なぜ財を咎めるのだ?私の財を他人は讃えているぞ」と言った
 ・すると、カスガは「他人の幸せは、自分の迷いです、その妬み・羨みから曲がり苦しむことになるでしょう」と言った
カルキミは「迷い・曲がりなく楽しく居るとはどういうことをいう?」と問うた
・そこで、カスガはこう答えた
 ・「結(死・終わり)を知っていますか?
 ・陽陰に受け、陽陰に還る、すなわち、魂と魄の結ばれて生を受け、終われば再び離れるのです
 ・出雲の民はカルキミが去った後も尚、"ススカノフミ(カシマタチの際のクシヒコの返答)"を見ていますよ」
・すると、カルキミは「クシヒコの諌めの文は"ススカ(涼か)"だったのか、今 理解できた」と言った

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用語解説

・ススクラ:心が欲に傾いた状態を指し、将来や来世が暗いことを意味する(ススカの逆)
・ススカ:心が欲を離れて真直ぐになっている状態を指し、将来や来世が明るいことを意味する(ススクラの逆)

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原文(漢字読み下し)

・来末(こすゑ)重(おも)ふに
・戒(いまし)めの 無(な)ければ乱(みた)る

・ハタレマの 財(たから)集(あつ)めて
・末(すゑ)消(き)ゆる  これ鈴暗(すすくら)そ
・生(い)きの内(うち) 欲(ほし)を離(はな)るる
・これは鈴明(すすか)そ

・チチ姫(ちち)は 垂(た)より出(い)てて
・ワカヒコに 今(いま)聞(き)くスズカ
・我(わ)か斎名(ゐみな) 君(きみ)賜(たま)われと
・訳(わけ)知(し)らす  また説(と)き給(たま)え

・応(こた)え説(と)く 鈴(すす)は真榊(まさかき)
・穂末(ほすゑ)伸(の)ひ 年(とし)に寸半(きなか)の
・六万(もよろ)穂木(ほき) 欲気(ほしゐ)お去(さ)れは
・進明(すすか)なり 財(たから)欲(ほ)しきは
・末(すゑ)消(き)ゆる

・時(とき)にカル君(きみ)
・進(すす)み言(い)ふ 何(なん)そ咎(とか)むや
・我(わ)か財(たから) 人(ひと)称(たた)ゆるそ

・翁(をきな)頷(うなつ)き
・クシヒコが 諌(いまし)めの涼(すす)か
・今(いま)解(と)けり

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります