現代語訳

・日代(景行)44年(上鈴831年)
 ・3月11日、黄昏時に神輿が出て能褒野から東へ向かった
  ・その際に諸司は松明を掲げ、サキカリ(先行者)の20人は榊を持った
  ・ソエカフト(副代人)はサルタヒコ神のミカホアテ(御顔当)とされた
  ・カフト(代人)の8人はヤモトハタ(八元幡)を持った
  ・オオカフトノ(大代殿≒ミヤズヒメの父)は臣8人を率いて、冠・御衣・御柱(ミタケバシラ)を持った
  ・オシヤマスクネ(オトタチバナヒメの父)は臣6人を率いて、冠・御衣・世掃し(ヨハキシ≒尾羽)を持った
  ・キビタケヒコ(アナトタケヒメの父)もこれと同様である
  ・オオタンヤワケ(フタヂイリヒメの父)は臣10人を率いて、冠・御衣・剣(叢雲剣)を捧げ持った
  ・ヲサノトミ(重臣)は家侍人(イエバト)30人を率いて、神輿・天覆い(アオホヒ)を司った
  ・ミヲスエ(行列の最後尾)には御子が付き、4丈8尺(約14.54m)の二流れの絹にすがって進んで行った
  ・なお、このミヲスエはアマテル神のノコルノリ(モスソオクメ)に倣っている
  ・そして、イワヒサヲシカ(タタネコ)と臣12人がミユキモリ(神逝守)に付けば、諸が神輿を継ぎ渡す
  ・その後、皆を送って その夜中から六夜に到るまでハラ宮(ニイハラ)のオホマノトノに神輿を座す
 ・この際、ミヤズヒメヤマトタケが世に座す如く扱って、キリヒ(鑽り火)で炊いた粥を平瓮に盛って奉った
 ・なお、これは頂くより先に入り待ち、神前に供えて姫はこのように言った
  ・「この御供は、昔 (ヤマトタケが)伊吹山から帰るときに捧げようと思っていたものです
  ・あの時、昼飯を自ら炊いて待っていましたが、君は寄らずに行ってしまいました
  ・散々悔やみましたが、君は神となって今また来てくださいました
  ・今度こそ、どうかアリツヨ(生前)のアヒチタで待っていた時の昼飯をお受けください」
 ・姫がこのように三度宣った
 ・すると、イサヨフツキの朗らかな光の中から白斎鳥がやって来て、粥を食べて行った
 ・そして、白鳥が現れた白雲から神の声が聞こえ、これに応えるツヅウタを歌った
  ・『ありつ代の 腹満つ欲しき 塵を放る飯(生前に腹を満たして欲しかった、この汚穢隈を祓う飯)』
 ・諸は このクシヒルを真に畏れて拝めば、白鳥は飛び去ってしまった
 ・以後、ヤマトタケはオホマノミヤから宮を遷し、差使に和幣と御言を上げられた
  ・この時の御使はタタネコ尾張連(オトヨ)であった
  ・そして、ヤマトタケは遷宮の後にニイハラのオホマノカミと名付けられた
  ・なお、この逸話は"神送る時の世を辞む御供のチリヒルメシ"として遺された

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用語解説



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原文(漢字読み下し)

・日代(ひしろ)四十四年(よそよほ)
・三月十一日(やよひそひ) 黄昏(たそかれ)よりそ
・神輿(みこし)行(ゆ)き 能褒野(のほの)お東(ひかし)
・諸司(もろつかさ) 掲(かた)む灯燃(たひまつ)
・先駆(さきかり)は 榊(さかき)に二十人(そふり)
・副代人(そえかふと) サルタヒコ神(かみ)
・御顔当(みかほあて) 代人(かふと)八人(やたり)は
・八元幡(やもとはた)

・大代殿(おおかふとの)は
・冠(かふり)・御衣(みは) 御柱(みはしら)持(も)ちて
・臣(とみ)八人(やたり) オシヤマ宿禰(すくね)
・冠(かふり)・御衣(みは) 世掃(よはき)し持(も)ちて
・臣(とみ)六人(むたり) キビタケヒコも
・同(おな)し前(まえ) オオタンヤワケ
・冠(かふり)・御衣(みは) 剣(つるき)捧(ささ)けて
・臣(とみ)十人(そたり)

・神輿(みこし)・天覆(あおほ)ひ
・長(をさ)の臣(とみ) 家侍人(いえはと)三十人(みそり)
・神尾末(みをすえ)は 絹二流(きぬふたなか)れ
・四丈(よたけ)八尺(やた) 御子(みこ)神尾末(みをすえ)に
・縋(すか)り行(ゆ)く アマテル神(かみ)の
・遺(のこ)る法(のり)

・斎(いつき)ひ差使(さをしか)
・臣(とみ)十二人(そふり) 付(つ)き神逝守(みゆきもり)
・諸(もろ)継(つ)かひ 皆(みな)送(おく)り行(ゆ)く
・夜中(よなか)まて かく六夜(むよ)到(いた)り
・ハラ宮(みや)の オホマの殿(との)に
・神輿(みこし)坐(ま)す

・世(よ)に坐(ま)す如(こと)く
・ミヤズ姫(ひめ) 鑽(き)り火(ひ)の粥(かゐ)お
・盛(も)る平瓮(ひらへ) 頂(いたた)き先(さき)に
・入(い)り待(ま)ちて 神前(みまえ)に供(そな)え
・申(もふ)さくは この御供(みけ)昔(むかし)
・伊吹(いふき)より 帰(かえ)さに捧(ささ)く
・昼飯(ひるめし)お 自(みつか)ら炊(かし)き
・待(ま)ち居(お)れと 寄(よ)らて行(ゆ)きます
・千々(ちち)悔(くや)み 今(いま)また来(き)ます
・君(きみ)の神(かみ) むへ受(う)け給(たま)え
・ありつ代(よ)の アヒチタに待(ま)つ
・君(きみ)か昼飯(ひるめし)

・三度(みたひ)宣(の)り 十六夜月(いさよふつき)の
・朗(ほか)ら光(か)に 白斎鳥(しらいとり)来(き)て
・これお食(は)み 現(な)る白雲(くも)に
・神(かみ)の声(こえ) 応(こた)ふ十九歌(つつうた)

・ありつ代(よ)の 腹(はら)満(み)つ欲(ほ)しき
・塵(ちり)お放(ひ)る飯(めし)

・奇(くし)ひるお 真(まこと)に畏(おそ)れ
・拝(おか)み去(さ)る オホマ殿(との)より
・宮(みや)遷(うつ)し 差使(さをしか)和幣(にきて)
・御言(みこと)上(あ)け この時(とき)御使(をしか)
・タタネコと 尾張(おはり)連(むらし)と
・新(にい)ハラの オホマの神(かみ)と
・名付(なつ)くなり 神送(かみおく)る時(とき)
・世(よ)お辞(いな)む 塵放(ちりひ)る飯(めし)と
・遺(のこ)るなり

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります