現代語訳

・年月が経つと、ニニキネ※の御幸が行われ、ホツマノニハリ(東の新領)が成立した
 ・そこではヲバシリに馬術を伝授されたタカヒコネ※が、ニニキネに乗馬を教えた
  ・その際、地道は簡単だが、荒・厳の技の得るのは困難で、百千回の練習を経て得られるものだと教えた
 ・そして、まずは馬の性質のあらましを説明した
 ・「ヒタカミの馬は肉が逞しく大人しいため、約一年で乗れるまでに教育でき、地道の後に荒乗りを教えるのがよい
  ・筑紫の馬は健康で大人しく、1年半程度で乗れるまでに教育できる
  ・なお、さらに教育すればイツカケ(猛進)させることもできる
  ・越国の馬は逞しいが教育し辛く、熟れたと思ってイツカケを教えると失敗することがあるように紛らわしい
  ・南の馬は小さく、覚えは早いが実戦に向かない
  ・なお、馬の特性は種によって毛色で分かれ、善し悪しも教育の仕方で大分変ってくる
  ・馬の良さは乗る回数を重ねれば分かってくるだろう」
 ・また、馬を使いこなせれば、害虫や自然の為す災いも除くことができるだろう
  ・敵と戦うときは、手に剣を持つため手綱にはアカルタエ(分栲)を使う
  ・アカルタエには絹は用いず縮む布、すなわち木綿を用いる
  ・八尺二つの布を、一方は馬の身から轡の突起部に結び、もう一方は手綱として自分の腰に挟み結ぶ
  ・この左右の二筋の布を腰のくびれに据えて綱を操る
  ・この際、馬の心に対応した指示を出すべし
 ・なお、妙技の喩えには、アメミヲヤが天地を整えて月日を生みだした故事が用いられる
  ・この故事を参考にして馬と息を合せてアカルタエを操るべし
 ・技を重要視するならば、この様にすると良い
  ・まず鞍を敷き、行きつ戻りつ60歩歩き、馬の足取りを見た後に乗馬する」

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用語解説

・タカヒコネ:オホナムチとタケコの二男。『記紀』でいうアヂスキタカヒコネに当たる
・ニニキネ:アマテルの御孫、オシホミミの御子、クシタマホノアカリの弟。『記紀』でいうニニギに当たる

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原文(漢字読み下し)

・年経(としへ)て後(のち)に
・ニニキネの 御幸(みゆき)ホツマの
・ニハリ成(な)る 乗(の)り法(のり)召(め)せは
・ヲバシリか 技(わさ)お受(う)けたる
・タカヒコネ

・地道(ちみち)は易(やす)く
・荒(あれ)・厳(いつ)の 技(わさ)は得難(ゑかた)き
・百千度(ももちたひ) 調(ととの)へ練(ね)りて
・これお得(う)る

・先(ま)つ知(し)る馬(むま)の
・生(うま)れ付(つ)き あらまし説(と)かん

・ヒタカミは 肉(しし)たくましく
・緩(ゆる)やかて やや一年(ひととせ)に
・乗(の)り熟(な)るる

・地道(ちみち)の後(のち)は
・荒乗(あれの)りや ツクシの馬(むま)は
・健(すこ)やかに 緩(ゆる)く

・熟(な)るるも
・年半(としなか)は 馳(は)せ・厳駆(いつか)けも
・長熟(なかな)れや

・また越国(こしくに)は
・たくましく 肉(しし)長熟(なか)れに
・急(いそ)く故(ゆえ) 三(み)・四月(よつき)熟(な)れて
・厳駆(いつか)けも 熟(な)れと急(いそ)くは
・怪(あや)しあり

・南(みなみ)の馬(むま)は
・小(ちい)さくて 達(と)し熟(な)れ早(はや)く
・根(ね)か薄(うす)く 功(いさおし)成(な)らす

・しかしまた 強(つよ)き弱(は)きも
・種(たね)により 毛色(けいろ)に分(わ)かつ
・善(よ)し悪(あ)しも 育(そた)ちによりて
・品(しな)替(か)わる 良(よ)く乗(の)り熟(な)れて
・これお知(し)る

・馬(むま)用(もち)ゆるは
・厭虫(いなむし)か 火水(ひみつ)のなせる
・禍(わさはひ)も 早乗(はやの)り為(な)して
・除(のそ)くなり

・もし法(のり)犯(おか)す
・者(もの)あれは 手(て)には剣(つるき)を
・持(も)つ故(ゆえ)に 轡(くつは)の綱(つな)は
・別(あか)る栲(たえ)

・絹(きぬ)は用(もち)ひす
・縮(ちち)み布(ぬの) 縮(ちち)める木綿(ゆふ)て
・八尺(やた)二(ふた)つ そのミツヅキを
・派(は)に結(ゆ)ひて 手継(てつき)お腰(こし)に
・挟(はさ)み帯(お)ふ

・この二条(ふたすち)を
・右左(みきひたり) 腰(こし)の捻(ひね)りに
・綱(つな)お率(ひ)く 馬(むま)の心(こころ)に
・応(こた)えてそ

・妙(たえ)なる技(わさ)お
・なす喩(たと)え 天地(あめつち)つなく
・中串(なかくし)の 息(いき)に月日(ひつき)の
・長(なか)・短(みち)か 春(はる)・秋(あき)となす
・ミヲヤ神(かみ) かく腰使(こしつか)ふ
・別(あか)る栲(たえ)

・技(わさ)お重(おも)はは
・鞍(くら)敷(し)きて 行(ゆ)きつ戻(もと)りつ
・六十歩(むそあゆ)み 足取(あしと)りを見(み)て
・後(のち)に乗(の)る

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります