現代語訳

・これ以前のこと、君が后を召す時にオミケヌシ※が諌めて申し上げた
 ・「君よ、よく聞いてください
 ・かつてシラヒト・コクミという者が母(サシミメ)を犯すという事件がありました
 ・その汚名も今に残っています、故に君も真似て汚名を被る様なことはなさらないでください」
・これにケクニオミのウツシコヲが答えた
 ・「イカシコメは母では無く姪である
 ・曰く『妹背には、女は嫁げば生みの親 無し』とある
 ・昔は叔母だが、今は姪として生む子がいる
 ・連なる枝(系譜)ではオシマコトの母であろう」
オミケヌシは それに答えた
 ・「天に月は一つである
 ・母(内宮)は月、下侍は星であろう
 ・なれば星を召すのが妥当である」
オミケヌシは、嘆いてさらに続けた
 ・「大御神は陽陰の道を成し、代々の君は、それを受け継いで収めた
 ・アメヒツキを汝(ウツシコヲ)が祀るのに、これを諌めずにおもねり、君を穴(空)にするとは何事か
 ・心を汚せば、我が上祖神(オオモノヌシ神※)は穢れは食わずとして君から離れるだろう」
・このように言い放つとオミケヌシは帰っていった
 ・しかし、君はオミケヌシの諌めを聞かず、ミケヌシを親子共々蟄居(謹慎処分)にした

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用語解説

・オミケヌシ:ミケヌシの子で、オオタタネコの祖父。開化天皇が孝元天皇の妻を内宮に立てたことに意見して失脚する
・オオモノヌシ神:大三輪の神のことで、クシヒコ・コモリ・ワニヒコを指す

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原文(漢字読み下し)

・七年一月十二日(なとしはつそふ)
・イキシコメ 立(た)てて内宮(うちみや)

・これの先(さき) 君(きみ)召(め)す時(とき)に
・オミケヌシ 諌(いさ)め申(もふ)さく
・君(きみ)聞(き)くや シラウド・コクミ
・母(はは)犯(おか)す 汚名(かな)今(いま)にあり
・君(きみ)真似(まね)て 汚名(かな)お被(かふ)るや

・ウツシコヲ 答(こた)え姪(めい)なり
・母(はは)ならす 曰(いわ)く妹背(いせ)には
・女(めと)婚(つ)きて 生(う)みの親(をや)無(な)し
・昔(むかし)叔母(おは) 姪(めい)今(いま)は続(つつ)
・生(う)む子(こ)あり 連(つつ)なる枝(ゑた)の
・オシマコト 母(はは)は違(たか)ひそ
・また答(こた)え 天(あ)に月一(つきひと)つ
・母(はは)は月(つき) 下侍(しもめ)は星(ほし)よ
・これお召(め)す

・嘆(なけ)きて曰(いわ)く
・大御神(ををんかみ) 陽陰(あめ)の道(みち)成(な)す
・代々(よよ)の君(きみ) 継(つ)き受(う)け収(おさ)む
・和日月(あめひつき) 汝(なんち)か纏(まつ)り
・諌(いさ)めすて 阿(おもね)り君(きみ)お
・穴(あな)にする 心(こころ)汚(きた)なし
・君(きみ)如何(いか)ん 我(わ)か上祖神(みをやかみ)
・離(はな)れんや 穢(けか)れ食(は)ますと
・言(い)い終(おは)り 帰(かえ)れと君(きみ)は
・これ聞(き)かす ミケヌシ親子(をやこ)
・噤(つく)みおる

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります