現代語訳

・(アマテルは、今までの話をまとめて詔した)
 ・「常に畏れ、尊べよ
  ・太陽の巡りは昼は人気も明らかだが、夜は暗黒に濁る
  ・肉体の病も天地の目線から見れば、天空と地上のような関係にある(陽・陰・世の関係)
  ・この相対する天地(陰陽)の関係を人の身に知るべし
  ・よって人のナカコも人二人であるのだ(魂魄の関係)
 ・この陽・陰・世の3つを合わすカカミ(明暗見=調和)は、"ヤ"はヤシロ(臣)、"タ"は民を整える
  ・その君(その主人)のヨロノミハタ(国の意向)の政治により、国の全土が左右される
  ・民は八尺、八尺身をあまねく照らすようにヤタノカガミと名付けたのである
  ・ミサノリ(和合の法)の趣旨を深く学んでここに知るべし」
アマテル※は、ここまでまとめ終えると今までのことをワカウタにして詠んだ
 ・『ハルナをはじめとするムハタレには、自分の罪を理解できない者も居る
 ・そのため、そのコリタマ(濁った心)の汚泥を濯いで、後に誓わせることとする
 ・荒猛心に寄る者も汚泥を濯いで誓いを為すべし』
・また、タチカラヲ※もワカウタを詠んだ
 ・『今までの講義を偶然に知ったとはいえ、例えイソラ・タツ・イヌであっても改心して守るべし』
・また、コモリ※はタウタ(養生歌)を考えて歌った
 ・『肺(垣)の病は治しやすい、情と味によって病になるのだから、ナカコには影響しない
 ・早々に癒そう、人業も、色欲も、道理に沿って行えば誤らず、反れることもない
 ・執着を捨てて、真っ直ぐな行いを心がければ良い
 ・離れれば、盗みに走るぞ』
・また、コモリは続けた
 ・「臣は常に人の活用について考えますが、肺(垣=周り)によって騙されてしまいます
  ・また、色欲によって腎(情報)に踊らされ、盗みを働けば、肝(臣)が損なわれるでしょう
  ・そして、その騒ぎでナカコが動転し、それが外見に現われます
 ・コトハ(言葉)・イキス(呼吸)の真髄を知れば、伝え導かれます
  ・ソロ(米)を肥やし、民を賑わせるのは、この誓いのみであります」
・そのとき、アマテルが詔した
 ・「汝はよく理解している
  ・よって、四方を巡って その道すがらに糧を増やせ
  ・暇があれば土地を巡るが良い
  ・そうすれば、荒廃した土地も再び肥えるであろう
 ・神の歌にこうある
  ・『培えば 惨の葦原も瑞穂成る 民と為せ臣 民と成れ民』
  ・(よく育てれば惨めな土地にも穂が成る 臣は民を教育し、民は民となるよう努力せよ)
・また、アマノコヤネ※は諸人に申し上げた
 ・「この歌の内容は末の末までも民の導きになるでしょう
 ・素直な業を教えて育てれば、家も栄えて繁盛することでしょう
 ・この歌は瑞穂を成せる激励歌でございます
 ・このような教えに導かれれば、民を整え賑わせます
 ・また、その国で保護して伝えれば、末民から上流の臣まで、必ずヲシテ(璽)として与え続けるでしょう
 ・とても尊い歌でございます」
・これによってアマテルが伝えた御歌は「威勢と崇高さを兼ね備えた御歌」と皆に讃えられた
 ・また、ミチトミヒコ(臣達)は諸声に、ヤモヨロ(民達)は百千声に出して感謝と喜びの声を上げた
 ・このように、ヤタノカガミの名のいわれは、とても恵みがあり、崇高なものであるのだ

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用語解説

・アマテル:いわゆるアマテラス(男神)であり、地上における日月の顕現とされる(地上における「神」として捉えられる)
・タチカラヲ:オモイカネとヒルコの子であり、『記紀』でいうタヂカラオに当たる
・コモリ:クシヒコの子で、後に3代目オオモノヌシとなる。18男18女の子を養育した功績により、コモリカミとなる
・アマノコヤネ:カスガの尊名。後にタケミカツチの娘と結婚する。『記紀』でいうアメノコヤネに当たる

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原文(漢字読み下し)

・常(つね)に畏(おそ)れよ
・日(ひ)の回(めく)り 昼(ひる)は人気(ひとか)も
・明(あき)らかて 夜(よる)は暗(か)と濁(にこ)る
・蝕(むしは)みも 陽陰(あめ)の心(こころ)に
・見(み)るは上(かみ) 埴(はに)と地上(しはかみ)
・この味(あち)お 人(ひと)の身(み)に知(し)る

・この三(み)つを 合(あ)わす明暗見(かかみ)の
・ヤはヤシロ タは民(たみ)を治(た)す

・その君(きみ)の 万(よろ)の御機(みはた)の
・政事(まつりこと) 治(をさ)む八隅(やすみ)の
・民(たみ)は八尺(やた) 八尺(やた)身(み)あまねく
・照(て)らさんと ヤタのカガミと
・名付(なつ)くなり

・尚(なお)みさ法(のり)の
・味(あち)わひを 深(ふか)く学(まな)ひて
・ここに知(し)るへし

・時(とき)に笑(ゑ)む ハルナ六(む)ハタレ
・先(さき)の罪(つみ) 許(ゆ)りても解(と)けぬ
・己(おの)か胸(むね) 今(いま)やや割(わ)るる
・濁(こ)り霊(たま)の 汚泥(をとろ)濯(そそ)きて
・後(のち)の結(を)お 置(お)く

・荒猛(あらたけ)に
・寄(よ)る人(ひと)も 汚泥(をとろ)濯(そそ)かん
・誓(ちち)ひなす

・またタチカラヲ
・谷(たに)を出(おて)て たまゆら聞(き)けは
・瑞(みつ)知(し)れり 喩(たと)ひイソラも
・竜(たつ)・狗(いぬ)も 拉(ひし)く心地(ここちて)
・侍(はん)へりき

・コモリ治歌(たうた)を
・考(かんか)えて

・肺(ふくし)の病(やまひ)
・治(た)し易(やす)し 情(なさけ)と味(あち)の
・過(す)き病(や)むも 根(ね)に入(い)らぬ間(ま)よ
・早(は)や癒(いや)せ 人業(ひとわさ)もこれ
・色欲(いろほし)も 道(みち)もて為(な)せは
・誤(あやま)たす 横寄(よこよ)らは病(や)む
・欲(ほ)しきをも 癒(ゐ)ゑ業(わさ)なせよ
・乏(とほ)しくと 盗(ぬす)まは枯(か)るる

・臣(とみ)常(つね)に 人(ひと)の活(いき)すを
・考(かんか)えは 騙(たま)すは肺(ふくし)
・色(いろ)腎(むらと) 盗(ぬす)めは肝(きも)ゑ
・損(そこ)なえは 驚(おとろ)く中子(なかこ)
・見目(みめ)に知(し)る 言葉(ことは)・イキスの
・瑞(みつ)知(し)れは 伝(つた)え導(みちひ)き
・ソロ肥(こ)やし 民(たみ)賑(にき)はさん
・誓(ちか)ひのみ

・時(とき)に和照(あまて)る
・御言宣(みことのり) むへなり汝(なんち)
・四方(よも)巡(めく)り 培(つちか)ふ道(みち)に
・糧(かて)増(ふ)やし  暇(いと)あらせて
・地(くに)恵(めく)り 万(よ)の葦原(あしはら)も
・瑞穂(みつほ)なる 神(かみ)の御歌(みうた)に

・培(つちか)ふは 惨(み)の葦原(あしはら)も
・瑞穂(みつほ)成(な)る 民(たみ)と成(な)せ臣(とみ)
・臣(とみ)と成(な)れ民(たみ)

・諸人(もろひと)に アマノコヤネの
・申(もふ)さくは 御歌(みうた)の味(あち)は
・末々(すえすえ)の 民(たみ)も導(みちひ)き 
・素直(すなお)なる 業(わさ)も教(をし)ゑて
・培(つちか)えは 家(ゐゑ)も栄(さか)えて
・繁(そろ)殖(ふ)ゆる 瑞穂(みつほ)と成(な)せる
・上(か)み歌(うた)そ

・かくの教(をし)ゑに
・導(みちひ)きて 民(たみ)も癒(ゐや)すく
・賑(にき)はせて その地(くに)保(たも)つ
・者(もの)あらは 末民(すえたみ)とても
・上(うえ)の臣(とみ) 必(かなら)すヲシテ
・賜(たま)ふなる 御歌(みうた)なりけり

・かけまくも いと畏(おそ)れみの
・御歌(おんうた)と 三千臣彦(みちとみひこ)も
・諸声(もろこえ)に 八百万民(やもよろたみ)は
・百千声(ももちこえ) あなありかたや
・あなにゑや あな嬉(うれ)しやと
・拝(をか)み去(さ)る ヤタの鏡(かかみ)の
・御名(みな)の謂(あや) いと恵(めく)みなり
・あな畏(かしこ)かな

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります