現代語訳

ヰツセの乳を集める御告れによって、このような報告があった
 ・「ヒエの麓に姫が居り、乳の出が良いために民の痩乳を助けているそうです
 ・この話によれば、姫の乳を飲んだ子は忽ち肥えると言います
 ・また、この姫は昔のカミノコと云われていますが、今は森に隠れ住んでいるそうです
 ・この森は五色の雲が起こることからイツモチモリと名付けられています
 ・諸守は参ろうとしないので、サオシカ(差使)を派遣するのが良いでしょう」
・この進言により、コモリの子のイワクラが派遣されることになった
 ・イワクラは姫の元を訪ねていき、君の元に来るように頼んだが、それに応じなかった
・帰ってこれを報告すると、ワカヤマクイ※(ヤマクイ)が出てきて このように進言した
 ・「ヲシカト(御使人)でなければ来ないでしょう
 ・その理由は、姫が森を離れればワケツチカミ(ニニキネ)を常に祀ることができなくなるからです」
・すると、詔によってヤマクイが御使人として派遣された
・そして、ヤマクイが母子(姫と御子)を召して宮に上がると、早速 母子に氏名を尋ねた
・すると、姫がこのように答えた
 ・「私の親はタケスミイソヨリヒメです
 ・私の名前は両親によってタマヨリヒメと名付けられ、ハテカミ※の孫に当たります
 ・この子に父は無く、神によって生まれました
 ・父が無ければ斎名は付きません、そのため人はイヅモノミコ(出雲の御子)と呼んでいます」

<<前   次>>

用語解説

・ワカヤマクイ:ニニキネの命によって山背の野を開拓し、ヒヱノヤマを造成した。『記紀』でいうオオヤマクイに当たる
・ハテカミ:ソヲの国守で、トヨタマヒメの父。『記紀』でいう海神、トヨタマヒコに当たる

<<前   次>>


原文(漢字読み下し)

・御告(つ)れによりて
・申(もふ)さくは 日似(ひゑ)の麓(ふもと)に
・姫(ひめ)ありて 乳良(ちちよ)き故(ゆえ)に
・民(たみ)の子(こ)の 痩(や)するに乳(ちち)お
・賜(たま)われは たちまち肥(こ)ゆる
・これ昔(むかし) 守の子(こ)なれと
・隠(かく)れ住(す)む

・森(もり)に五色(ゐいろ)の
・雲(くも)起(おこ)る イツモチ森(もり)と
・名(な)付(つ)くなり 諸守(もろかみ)乞(こ)えと
・参(まい)らねは 差使(さおしか)なされ
・然(しか)るへし

・時(とき)にイワクラ
・窺(うかか)いて 使(つかい)お遣(や)れと
・来(き)たらねは 自(みつか)ら行(ゆ)きて
・招(まね)けとも 頷(うなつ)かぬ由(よし)
・返言(かえこと)す ワカヤマクイか
・申(もふ)さくは 御使人(をしかと)ならて
・来(こ)ぬ故(ゆえ)は ワケツチ神(かみ)お
・常(つね)祭(まつ)る 召(め)せは祭(まつり)の
・欠(か)くる故(ゆえ)なり

・御言宣(みことのり) ヤマクイおして
・召(め)す時(とき)に 母子(ははこ)上(のほ)れは
・見(み)給(たま)ひて 氏名(うちな)お問(と)えは
・姫(ひめ)答(こた)え 親(をや)のタケスミ
・イソヨリか 名付(なつ)くタマヨリ
・ハデか孫(まこ) 子(こ)は父(ちち)も無(な)く
・神(かみ)生(う)りそ 父(ちち)か無(な)けれは
・斎名(いみな)せす 出雲(いつも)の御子(みこ)と
・人(ひと)か呼(よ)ふ

<<前   次>>

現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります