現代語訳

・(アマテルは続けた)
・「私の見る限り、人の意識は変わって行くもの(常識は変容する)
・驕りに容易く、減りに難し(下降しやすいが上昇しにくい)
・故にハタノヲリノリ(機の織法)を定める
 ・機の幅は経糸800垂とする
 ・ヲサ(筬)400歯、80垂をヒトヨミ(一算=最小単位)とする
 ・8垂を一手とし、ヘグヰを揃え、アレヲサ(粗筬)に撒いて筬を入れる
 ・カサリ掛け、踏木の陰陽を踏み分けて(経糸を上下二手に分けて)杼を投げる
 ・筬を巡らせて木綿・布も絹も織るべし
 ・十算物(800垂)をオオモノヌシ※の常の衣とし、喪は九のカタオリ(固衣)とする
 ・九算者(720垂)をムラジ※(連)・アタヒ※(直)の常の衣とし、喪は九の固衣とする
 ・八算物(640垂)をアレオサ※(粗長)・ベオミ※(卑臣)の常の衣とし、喪は八の固衣とする
 ・七算撚り(560垂)フト(太布)は民の常の衣とし、喪は六の固衣とする
 ・そして、我は十二算(960垂)を着る、これは月の数を指し、喪は十の固衣とする
 ・夏はヌサを績みて布織り、冬はユキを撚って木綿を織れ
 ・着る時は貴賎諸々の気も安らぐことであろう
 ・飾りを見れば賑わえど、内心は苦しむ
  ・それ故に木綿・布・絹を染めて飾る
 ・これを為す者は、農耕は免除する
  ・もし農耕をしながらすれば休みが無くなるであろう
  ・なれば、田も荒れて実りの季節が来ても収穫は乏しくなる
  ・人数分の糧が賄えたとしても、本来の収穫量を得ることはない
  ・稲の実は食うても肥えず、ようやく糧が足りるような状態になるだろう
 ・誇る世は、陽陰の憎みによって雨風の時節も変わってくる
  ・なれば、稲が痩せて民の力も尽きてしまい、代々苦しむことになるぞ
 ・また、飾りものは驕る要因となり、利口で狡猾になった者はハタレに憑かれる
  ・なれば、国は乱れて民は安心できないであろう
  ・故に常に民のヰヤスシ(健全となる)木綿を着るのだ
 ・また、麻子と菅の羽二重は、民の健全の長らえを日毎に祈る衣である
 ・また、ニシコリ(錦織)はユキ・スキ宮の大嘗会の時の衣である
 ・また、アヤオリ(綾織)はハニノヤシロの新嘗会に優き祈る衣である
  ・この故は綾・錦織は筬歯800、1歯に4垂、計3200垂であり、これは葦原の1500村を治める臣の数に由来する
  ・また、タナバタカミ※(棚機神)とタハタカミ※(田畑神)を同じマツリ(天の祭と地の政)とするのが綾と錦である
 ・3000垂の経にヘカサリ※(綜・替更り)を掛けて4つ6つ踏み分けよ
 ・"ヤナキアヤ(柳文)"なる花形は、ヱカキマノリ(描き真延)に当て写せ
 ・ツウヂ・ヨコヘに吊り分けて、ヲリヒメ(織姫)をカサリ(替更り)踏む
 ・なお、踏む時にヨコヘに分けてツウヂを率い、杼を貫き投げて筬を巡る
  ・綾・錦織もこれである
 ・以上がタカハタノリ(高機法)のあらましである」

※位階を示すのに身分相応の衣服を定めた

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用語解説

・オオモノヌシ:中央政権のモノヌシ(モノノベの主)を指し、八百人のモノノベ(君に仕えて民を治める者)を統括する役職
・ムラジ:オオモノヌシの補佐(副官)
・アタヒ:罪人の清汚を数えるモノノベ
・アレオサ:経糸をまとめる押えに擬えて、行政区画の粗(アレ)の長を指す
・ベオミ:下位の臣を指す
・タナバタカミ:大嘗会の際、ユキ宮・スキ宮に祀る天の神(モトアケの49神)
・タハタカミ:大嘗会でアユキの宮、新嘗会ハニノヤシロに祀る神
・ヘカサリ:経糸を掴むもとの上下させる機構

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原文(漢字読み下し)

・我(われ)見(み)るに 人気(ひとい)は変(かわ)る
・驕(おこ)りかち 減(へ)りには難(かた)く
・故機(かれはた)の 織法(をりのり)定(さた)む

・結(ゆふ)の幅(はは) 経糸(たていと)八百垂(やもり)
・筬四百歯(をさよもは) 八十垂一算(やそりひとよみ)
・八垂一手(やりひとて) 綜杭(へくゐ)に揃(そろ)ゑ
・粗筬(あれをさ)に 散(ま)き筬(さ)に入(い)れ
・替更(かさ)り掛(か)け 陰陽(めを)踏(ふ)み分(わ)けて
・杼(かひ)投(な)くる 筬(をさ)巡(めく)らせて
・木綿(ゆふ)・布(ぬの)も 絹(きぬ)も織(を)るなり

・十算物(とよみもの) モノヌシ尊(かみ)の
・常(つね)の衣(は)そ 喪(も)には固織(かたおり)

・九算物(こよみもの) 連(むらし)・直(あたひ)ら
・常(つね)の衣(は)そ 喪(も)は九(こ)の固衣(かたは)

・八算物(やよみもの) 粗長(あれをさ)・卑臣(へをみ)
・常(つね)の衣(は)そ 喪(も)は八(や)の固衣(かたは)

・七算(なよみ)撚(よ)り 太布(ふとの)は民(たみ)の
・常(つね)の衣(は)そ 喪(も)は六(む)の固衣(かたは)

・我常(われつね)に 十二算(そふよみ)お着(き)る
・月(つき)の数(かす) 喪(も)は十(そ)の固衣(かたは)

・夏(なつ)はヌサ 績(う)みて布(ぬの)織(を)り
・冬(ふゆ)はユキ 撚(よ)りて木綿(ゆふ)織(を)り
・着(き)る時(とき)は 上下(かみしも)万々(よよ)の
・気(ゐ)も安(やす)く

・飾(かさ)るお見(み)れは
・賑(にきは)えと 内(うち)は苦(くる)しむ

・その故(ゆえ)は 木綿(ゆふ)・布(ぬの)・絹(きぬ)お
・染(そ)め飾(かさ)る これ為(な)す人(ひと)は
・耕(たかや)さて 暇(ひま)欠(か)く故(ゆえ)に
・田(た)も粗(あ)れて たとひ実(みの)れと
・乏(とほ)しくて やや人数(ひとかす)の
・糧(かて)あれと 元力(もとちから)得(ゑ)ぬ
・稲(いね)の実(み)は 食(は)みても肥(こ)えす
・漸(やふや)くに 糧(かて)足(た)らさるそ

・誇(ほこ)る世(よ)は 陽陰(あめ)の憎(にく)みに
・雨風(あめかせ)の 時(とき)も違(たか)えは
・稲(いね)痩(や)せて 民(たみ)の力(ちから)も
・やや尽(つ)きて 弥(よ)に苦(くる)しむそ

・飾(かさ)りより 驕(おこ)りになりて
・研(と)き化(は)かる 果(は)てはハタレの
・国(くに)乱(みた)れ 民(たみ)安(やす)からす
・故(かれ)常(つね)に 民(たみ)の癒(いや)すき
・木綿(ゆふ)お着(き)る

・麻子(あさこ)と菅(すか)の
・羽二重(はふたゑ)は 民(たみ)の癒(ゐや)すく
・長(なか)らゑと 日(ひ)に祈(いの)る衣(は)そ

・錦織(にしこり)は ユキ・スキ宮(みや)の
・大嘗(おおなめ)の 会(ゑ)の時(とき)の衣(は)そ

・綾織(あやおり)は 埴(はに)の社(やしろ)の
・新嘗会(さなめゑ)に 優(す)き祈(いの)る衣(は)そ

・この故(ゆえ)は 綾(あや)・錦織(にしこり)は
・筬歯八百(おさはやも) 一歯(ひとは)に四垂(よた)り
・三千二百垂(みちふもり) これ葦原(あしはら)の
・統(とよ)の数(かす) 棚機神(たなはたかみ)と
・田畑神(たはたかみ) 同(おな)しマツリの
・綾(あや)・錦(にしき)

・三千垂(みちり)の経(たて)に
・綜(へ)・替更(かさ)りお 掛(か)けて四(よ)つ六(む)つ
・踏(ふ)み分(わ)くる

・柳紋(やなきあや)なる
・花形(はなかた)は 描(ゑか)き真延(まのり)に
・当(あ)て写(うつ)し ツウヂ・ヨコヘに
・吊(つ)り分(わ)けて 織姫(をりひめ)替更(かさ)り
・踏(ふ)む時(とき)に ヨコヘに分(わ)けて
・ツウヂ率(ひ)く 杼(かひ)貫(ぬ)き投(な)けて
・筬巡(をさめく)る 綾(あや)・錦織(にしこり)も
・これなるそ 高機法(たかはたのり)の
・あらましそこれ

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります