現代語訳

・基の音の"アム(編む)""ヤワシ(和し)"のツクハネ(陽陰の源)を結び現したのはアメミヲヤ※である
・今は二尊も これに擬えてツクバノカミと称えられている
・その時、西に侍るヒルコ宮(ヒルコ※)皇子(オシホミミ※)ヱビス(クシヒコ※)は謹んで音声の起源について教えを乞うた
・そのとき、アマテル※は このように詔した
 ・「初の巡り(順番)は"ア"のオシテであり、これは天地を分ける形である
  ・人の初音も"ア"に開き、口を塞ぎ吹く"イキ(息)"に蒸れて、鼻に通うのが"ウヌ"の音である
 ・基は"ア"で上を向くオシテにより、3つに分かれて清き"ウ"と、軽く散る"ン"と、半の"ヌ"と共に火(日)を生んだ
  ・これがアネ(天音)となり、同時に継ぎ生む地を結ぶ種の"ウア""ワ"を生む
 ・(アのオシテの)球の央も陰陽と分かれて、外は天に、中は地となる
  ・このオシテより"ア""イ"と破れて"エ"と流れる、"ワウ""オ"となる(ヲシテの形を参照)
  ・"ア"は空、"イ"は風、"ウ"は日、"エ"は水、"オ"は埴で、この5音が交わって人のイキス(息)となる
  ・これにより、五・七(調)に分けた48音の綴りが成ったのである
 ・そして、遂に音声の道が開けばアワウタが成り、また後にアワクニが成った
  ・このアワクニを胞衣(育成の基盤)としてヤマトヤシマを生んだのである」
・その時、ヒルコは まだ解けず、「昔、二尊が生んだ子は三男尊と一女ですが、どうやって国を生んだのでしょう」申し上げた
・すると、アマテルはこのように答えた
 ・「アメノヤワシ(陽陰和合の生命力)それとは別である
 ・結んで生んだ"ア(陽)""ワ(陰)"の音は生成を促進するのである
 ・されば、"ア(陽)""ウ(結)""ワ(陰)"は発展の胞衣(基盤)となるであろう
 ・いやもちろん、"ア""ウ"の音は根源を一つとし、それから既に48音に分けられた
 ・故にアワウタは"ヤツノカタチニムツノリ(八の形に六乗り)"の不変の真理を48音で繰り返しているのである
  ・『アカハナマ イキヒニミウク フヌムエケ ヘネメオコホノ モトロソヨ ヲテレセヱツル スユンチリ シヰタラサヤワ』
 ・このようにアワミチ(和道)に心尽くせと教えているのである」
ニフノカミ(ヒルコ)アマテルの教えを理解して和して笑めば、アマテルはさらに説明を続けた
 ・「アワミチの基の心を連々と思ってみれば、アメノリ(アワウタ)の言葉の端は『アカハナマ(開華満)』
  ・開華満は、天高く昇り、満ち足りる日(太陽)のワカハネルマツ(生まれて成長して老い尽きる)のことである
 ・また、タラチヲ(陽)の『イキヒニミウク(活霊に実受く)』の添え歌によってイキスが成る
  ・これは、"ヒ"の母音のイの風の活性化によりイキスが成ると言えるだろう
 ・また、人心を据えれば『フヌムエケ(ふ・ぬ・む 得け)』となる
  ・これは、ウの母音を持つ子音を区別して知れば、陽が配る勢いを数える歌であると言えるだろう
 ・また、『ヘネメオコホノ(隔辺を乞の)』の擬えは『モトソロヨ(戻ろそよ)』に続く
  ・これは、人が久方のアマノハラに還ることを指し、ナカゴ(心)を光輝かせて還れば再び生まれ変わるという喩え歌である
 ・また、『ヲテレセヱツル(央照れせ熟つる)』はタダコトノウタの導きである
  ・歌によってウムクニの言葉を直せば『スユンチリ(直斎繁)』と続き、長生きして健やかに身を保つのである
  ・故に"弥々に永らえ"という祝歌と言えるだろう
 ・そして、『シヰタラサヤワ(魄足らさ和)』は、女は地の随従と同調を編み合わせヰミチ(妹道)を現すのである
 ・このアワノウタを私(アマテル)も歌えば、諸人の和を生むために札を染めて、諭し教えよう
 ・ニノミチ(和の道)も磨かねば曇ってしまうものである
 ・ヒルコ尊…(以下、欠落)」

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用語解説

・アメノミヲヤ:陽陰を分け現す元であり、宇宙の根源神であるとされる
・ヒルコ:イサナギとイサナミの第一子であり、『記紀』でいうヒルコに当たる
・オシホミミ:アマテル神とセオリツヒメの御子であり、『記紀』でいうオシホミミに当たる
・クシヒコ:オホナムチとタケコの長男で、初代コトシロヌシ。『記紀』でいうコトシロヌシだが、オオクニヌシの要素も持つ
・アマテル:イサナギ・イサナミの子であり、『記紀』でいうアマテラスに当たる。日月(太陽・太陰)の顕現と見なされる

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原文(漢字読み下し)

・基(もつ)つ音(ね)の 編(あ)むと和(やわ)しの
・付離根(つくはね)お 結(むす)ひまします
・陽陰上祖(あめみをや) 今(いま)二尊(ふたかみ)も
・なそらえて 付離(つくは)の神(かみ)と
・称(たた)ゑたまひき

・その時(とき)に 西(にし)に侍(さむら)ふ
・ヒルコ宮(みや) 皇子(みこ)とヱビスの
・謹(つつし)みて 音声(ねこえ)の初(はし)の
・御教(みをし)ゑお 聞(き)かま欲(ほ)しけの
・乞(こ)ひ願(ねか)ひ 時(とき)に和照(あまて)る
・御言宣(みことのり)

・初(はし)の巡(めく)りは
・あの押手(おして) 天地(あめつち)分(わ)かつ
・形(かたち)なり 人(ひと)の初音(ういね)も
・あに開(あ)きて 口(くち)塞(ふさ)き吹(ふ)く
・いき蒸(む)れて 鼻(はな)に通(かよ)ひの
・うぬの音(ね)は 基(もと)あか上(のほ)る
・押手(おして)より 三(み)つに分(わか)れて
・清(きよ)きうと 軽(かろ)く散(ち)りんと
・半(なか)のぬと 共(みた)も火(ひ)お生(う)む
・天音(あね)となり 継(つ)き生(う)む地(つち)お
・結(むす)ふ種(たね) うあのわお生(う)む

・球(たま)の央(を)も 陽陰(あわ)と分(わか)れて
・外(そと)は天(あ)に 中(なか)は地(わ)となる
・押手(おして)より あはいと破(やふ)れ
・えと流(なか)れ わうはおとなり
・あは空(うつほ) いは風(かせ)うは火(ほ)
・えの水(みつ)と おの埴(はに)五音(ゐつね)
・交(まし)わりて 人(ひと)の息(いき)すと
・成(な)りてより 五(ゐつ)・七(なな)分(わ)けて
・四十八筋(よそやすも)

・遂(つゐ)に音声(ねこえ)の
・道(みち)開(あ)きて 成(な)るアワ国(くに)お
・胞衣(ゑな)として ヤマト八州(やしま)お
・生(う)みたまふ

・その時(とき)ヒルコ
・また解(と)けす 昔(むかし)二尊(ふたかみ)
・生(う)みませし 三男尊(みをかみ)一女(ひとめ)
・その他(ほか)に 如何(いか)てか国(くに)お
・生(う)むやらん

・陽陰(あめ)の和(やわ)しは
・それならす 結生(うゐ)のあわ音(ね)は
・成(な)り生(お)いお 押(お)し優(すく)るなり
・然(しか)はその あうわは肥(こ)ゑの
・胞衣(ゑな)ならん 否(いや)とよあうは
・根(ね)お分(わ)けす すてに分(わ)くるる
・アワ歌(うた)は 八(やつ)の形(かたち)に
・六乗(むつの)りの 常(つね)の諭(さと)しお
・くり返(かゑ)してよ

・アカハナマ イキヒニミウク
・フヌムエケ ヘネメオコホノ
・モトロソヨ ヲテレセヱツル
・スユンチリ シヰタラサヤワ

・和道(あわみち)に 心(こころ)つくせと

・和(にふ)の守(かみ) 陽陰(あめ)の教(おし)ゑに
・やや覚(さ)めて 和(やわ)し笑(わら)はす

・アワ道(みち)の 基(もと)の心(こころ)お
・連々(つらつら)と 思(おほ)ん見(み)てれは
・アメ宣(のり)の 言葉(ことは)の端(はな)は
・開華満(あかはなま) 天高(あたか)く昇(のほ)り
・熟成(あな)る日(ひ)の 湧(わか)・跳(は)ねる・全(ま)つ

・タラチヲの 活霊(いきひ)に実(み)受(う)く
・添歌(そゑうた)は ひの手(て)の活(か)せの
・成(な)るイキス

・心(こころ)定(さた)めて
・ふ・ぬ・む得(え)け 基陽(もとを)の声(こえ)お
・分(わ)け知(し)れは 配(くは)るお猛(たけ)に
・数(かそ)え歌(うた)

・隔辺(へねめ)お乞(こ)の
・なそらえは 人(ひと)の隔辺(へなみ)の
・天(あま)の原(はら) 六宗(むむね)は清(きよ)く
・戻(もと)ろそよ 熾(おこ)り明(あ)かして
・還(か)ゑは新(に)に 違(たか)え生(う)まるる
・喩(たえ)え歌(うた)

・央(を)照(て)れせ熟(ゑ)つる
・直言(たたこと)の 歌(うた)に導(みちひ)き
・生(う)む国(くに)の 全(また)く徹(ほ)れは

・直斎繁(すゆんちり) 寿(ことほき)き直(す)くに
・身(み)お保(たも)つ 弥々(よよ)永(なか)らえの
・祝歌(ゐわひうた)

・魄(しゐ)足(た)らさ和(やわ)
・女(め)は地(くに)の 付(つ)きとミヤビお
・編(あ)み和(やわ)せ 妹道(ゐみち)現(あらは)す

・和(あわ)の歌(うた) 我(われ)も歌(うた)えは
・諸人(もろひと)の 和(に)お生(う)まんとて
・札(ふた)染(そ)めて 諭(さと)し教(おし)えん
・和(に)の道(みち)も 磨(と)かねは曇(くも)る

・ヒルコ尊(かみ)

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります