現代語訳

・「このとき、植え継ぎは21鈴で年は既に、120万7520年(21鈴125枝20穂)であった
・そこでトヨケ※はこの様に言った
 ・『思えば、尊孫は1500氏ある
 ・しかし、その中にアメノミチ※(陽陰の道)を得て人草の嘆きを和す尊は居ない
 ・居なければ秩序も尽きてしまうのか』
・そのように嘆いたトヨケはハラミ山に登って巡り、このように呟いた
 ・『ヤシマ(八洲)に居る万・十万の民は、ただ蠢いているだけなので道を習えるのが道理か』
・やはり嘆いてヒタカミの宮に帰ると、娘のイサナミが父のトヨケに申し上げた
 ・『やはり、ヨツキコ(代嗣子)が必要だと思います』
トヨケは早速占って、ツキカツラキのイトリヤマ(斎鳥山)のヨツギヤシロ(代嗣社)にヤトヨハタ(色垂)を飾った
 ・そして、アメノミヲヤ※を祈ろうと、トヨケは自ら禊をし、八千座の神と契って抜きん出たイツチ(厳霊)を見せた
・すると、トヨケの祈りが神に届き、アメノミヲヤの眼から漏れる日月、アモト(天元神)、ミソフ(三十二神)の守護を得た
 ・これによって、日嗣の御子の成る方法を授かった
・この頃、君(二尊)はハラミ山に登ってこう言った
 ・『諸共に国々を巡り、民を治めて、姫御子を儲けたが、嗣子は得られなかった』
・そう言うと、コノシロイケ(子代池)の水で左眼を洗ってヒル(日霊)に祈り、右眼を洗ってヨル(月霊)に祈った
 ・また、この際にイシコリトメマスカカミ(真澄鏡)を鋳造して献上した
イサナギアメオシラスルウツノコ※を生もうと思い、マス鏡を日月に擬えて日月の神霊の降誕を請うた
 ・この際、山頂を巡る間に"アグリ(高揚)"を請うた
 ・その後、日を重ねて神霊が身体の節々に染み入り、1000日経つ頃には各所が桜色になっていた
・ある日、イサナギイサナミにオヱ(月経)の日を問うと、イサナミはこう言った
 ・『月のオヱの流れは止まった3日後で、身を清めるためにヒマチ(日待ち)します』
・するとイサナギは笑み、イサナミと共に朝日を拝むと、二尊の前に日輪が落ちてきて留まった
 ・二尊は思わず日輪を抱くと、夢心地に至った
 ・夢から覚めると爽快で、二尊が宮に帰って時にヤマスミ(サクラウチ)がササミキを勧めた
・そこでイサナギが、イサナミに床酒の意味を知っているかと問うた
・すると、イサナミはこのように返答した
 ・『床酒は、まず女が酒を飲み、後に男に勧めます
 ・床入は、女は語らず、男の準備を女が察して交ぐ合います
 ・そして、舌露を吸えばお互いに打ち融けて、タマシマカワ(玉島川)のウチミヤ(内宮)に子種を宿します
 ・これがトツキノリ(婚ぎ法)であり、子を調えるトコミキ(融酒)はクニウムミチ(国生む道)の教えと存じます』
・こうして二尊は交わって子を孕んだ
 ・しかし、子は10ヵ月では産まれず、年月が経っても産まれる気配が無かったため、病に罹ったと心を痛めた
・そして、96ヵ月目にやっと産気付き、ここで生まれたのがアマテルである」

<<前   次>>

用語解説

・トヨケ:イサナミの父であり、五代目タカミムスビに当たる。いわゆる豊受大神に当たり、多大な功績を遺した
・アメノミチ:陰陽和合・調和の道を説く道徳を指す
・アメノミヲヤ:大宇宙の根源の意識であり、いわゆる創造主を指す
・アメオシラスルウツノコ:陽陰(月日)が和合を現す子

<<前   次>>


原文(漢字読み下し)

・植(う)ゑ継(つ)きは 二十一(ふそひ)の鈴(すす)の
・年(とし)すてに 百二十万七千(もふそよろなち)
・五百二十(ゐもふそ)に 鑑(かんか)みれとも
・尊孫(かんまこ)の 千五百氏(ちゐもうし)ある
・その中(なか)に 陽陰(あめ)の道(みち)得(え)て
・人草(ひとくさ)の 嘆(なげ)きを和(やわ)す
・尊(かみ)あらす あらねは道(みち)も
・尽(つ)きんかと

・嘆(なけ)くトヨケの
・ハラミ山(やま) 登(のぼ)りて回(み)れと
・八州(やしま)なる 万(よろ)・十万民(ますたみ)も
・蠢(うくめ)きて 道(みち)習(なら)えぬも
・理(ことわり)と

・やはり嘆(なけ)きて
・ヒタカミの 宮(みや)に帰(かえ)れは
・イサナミの 父(ちち)に申(もふ)して
・代嗣子(よつきこ)も かなと思(おほ)せは

・占(うら)ひて ツキカツラキの
・斎鳥山(いとりやま) 代嗣社(よつきやしろ)の
・色垂(いろして)は アメノミヲヤに
・祈(いの)らんと トヨケ自(みつか)ら
・禊(みそき)して 八千座(やちくら)契(ちき)り
・抜(ぬ)きんつる 厳霊(いつち)

・神祈(かみの)り
・通(とほ)りてそ アメノミヲヤの
・眼(まなこ)より 漏(も)るる日月(ひつき)と
・天元神(あもとかみ) 三十二(みそふ)の神(かみ)の
・守(まも)る故(ゆえ) 子種(こたね)成(な)ること
・覚(おほ)ゑます

・この頃(ころ)君(きみ)は
・ハラミ山(やま) 登(のほ)りて曰(いわ)く
・諸共(もろとも)に 国々(くにくに)巡幸(めく)り
・民(たみ)を治(た)し 姫(ひめ)御子(みこ)生(う)めと
・嗣子(つきこ)なく   楽(たの)しなきとて
・池水(いけみつ)に 左(た)の目(め)を洗(あら)ひ
・日霊(ひる)に祈(の)り 右(か)の目(め)を洗(あら)ひ
・月(つき)に祈(の)り

・イシコリトメか
・マス鏡(かかみ) 鋳造(いつく)り進(すす)む
・イサナギは 陽陰(あめ)を領(し)らする
・現(うつ)の子(こ)を 生(う)まん思(おも)ひの
・マス鏡(かかみ) 両手(まて)に日(ひる)・月(つき)
・擬(なつ)らえて 神(かみ)生(な)り出(い)てん
・事(こと)を請(こ)ひ 頭(くひ)回(めく)る間(ま)に
・あぐり乞(こ)ふ

・かく日(ひ)を積(つ)みて
・神霊(みたま)入(い)る   門(かと)は身柱(ちりけ)の
・結所(あやところ) 行(おこな)ひ千日(ちか)に
・なる頃(ころ)は 白脛(しらはき)染(そ)みて
・桜色(さくらいろ)

・ある日(ひ)男尊(をかみ)か
・汚穢(をゑ)問(と)えは 姫(ひめ)の答(こた)えは
・月(つき)の汚穢(をえ) 流(なか)れ止(とと)まり
・三日(みか)の後(のち) 身(み)の清(きよ)けれは
・日(ひ)待(ま)ちすと 男尊(をかみ)も笑(え)みて
・諸共(もろとも)に 拝(おか)む日輪(ひのわ)の
・飛(と)ひ下(くた)り 二尊(ふたかみ)の前(まえ)
・落(お)ち留(とと)む 思(おも)わす抱(いた)く
・夢心地(ゆめここち)

・覚(さ)めて潤(うるほ)ひ
・快(こころよ)く 宮(みや)に帰(かえ)れは
・ヤマスミか ささ酒(みき)進(すす)む
・故(かれ)男尊(をかみ) 床酒(とこみき)知(し)るや
・女(め)の答(こた)え コトサカノヲか
・道(みち)聞(き)けは  床酒(とこみき)は先(ま)つ
・女(め)か飲(の)みて 後(のち)男(を)に進(すす)む
・床(とこ)入(い)りの 女(め)は言挙(ことあ)けす
・男(を)の装(よそ)い 女(め)が知(し)り婚(とつ)く
・舌露(したつゆ)を 吸(す)えは互(たか)ひに
・打(う)ち融(と)けて 玉島川(たましまかわ)の
・内宮(うちみや)に 宿(やと)る子種(こたね)の
・婚(とつ)き法(のり) 子(こ)を調(ととの)ふる
・融酒(とこみき)は 国(くに)生(う)む道(みち)の
・教(をし)ゑそと

・かく交(まし)わりて
・孕(はら)めとも 十月(とつき)に生(う)ます
・年月(としつき)を 経(ふ)れともやはり
・病(や)めるかと 心(こころ)傷(いた)めて
・九十六月(こそむつき) やや備(そな)わりて
・生(あ)れませる アマテル神(かみ)そ

<<前   次>>

現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります