現代語訳

・「21鈴125枝年キシヱ(31穂の元旦)、初日の出がほのぼのと出ずる時にアマテルは生まれた
 ・その形は円のタマコ(保籠)のようだった
 ・このとき、大老翁のヤマスミ(サクラウチ?)が寿ぎを歌った
  ・『世嗣を得たことは、今後の幸いの到来の兆しである(このようなニュアンス)』
 ・このように大喜びで寿き、三度に及んで幸喜を謳った
 ・また、アマテルの胞衣について質問があれば、この様に答えた
  ・『トヨケ尊の教えにもあるように、これはイソラ(逸霊)を祓うものである
  ・胞衣の囲いはオノコロ※のタマコとなって幸喜(ユキヨロシ※)である』
 ・そして、遂にアマテルの胞衣を開くことになった
  ・『タマノイワトを開け』とイチヰの木の笏(一位笏)で胞衣を開いた場所は、アマノト(天地の戸)という
 ・胞衣を開くとタマコの中から輝いたアマテルが現れ、それをシラヤマヒメ※が産湯に浸した
  ・また、アカヒコが桑に引いた糸を、ナツメが織った絹糸の御衣を献上した
 ・なお、母・イサナミの母乳が細かったことから、補飯の守のミチツヒメが乳を献上した
  ・しかし、アマテルは瞳を閉じたままで月日のウルは見られなかった
・初秋の7月15日、アマテルの瞳が開き、そのシホノメ(初めて目が開くこと)には民が手を打ち喜ぶ姿が映った
 ・そして、天にたなびく白雲が掛かったヤミネ(八峰)に降るアラレを表現したヤトヨハタをタカミクラの八隅に立てた
  ・これをもってアマテルは正式に君となった
  ・一位笏を持つ者は、クラヰノヤマで生まれたアマテルの子孫(尊の穂末)である証となった
 ・また、叔母のシラヤマヒメがコヱネクニで御衣を織って献上する際、御子(アマテル)の泣き声が聞こえた
  ・その声を聞きとれば「あなうれし」という、それにより諸人が御子の名を請うた
  ・代表してシラヤマヒメが御子に直接名を問うと「ウヒルキ」と答えたため、御子の幼名はウヒルキという
   ・ウヒルキ"ウ""大い""ヒ""日輪""ル""陽の精霊""キ""熟(キネ)"を指す
   ・故に"ウヒルキ(太陽霊貴)"の尊であり、"キネ"は男の君を指す
  ・二尊は御子の幼名を聞き出したシラヤマヒメの功を讃えてキクキリヒメの名を与えた
・アカタマ(太陽)のワカヒル(若日)の霊は、まだ未熟な青い霊の意である
 ・しかし、やがて暮日の神霊であるヌバタマ(萎霊)となるだろう
・なお、久方の光(アマテル)が生まれたことで、新嘗会に天悠紀・地主基などの祭りが行われ、二尊は御子の養育に尽くした
 ・また、アマテルアマノハラ※に16年座したが、二尊が気に掛けない日は一日も無かった」

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用語解説

・オノコロ:複数の意味があり、ここでは"周りを包んで恵む"という意味合いを持つ胞衣を指す
・ユキヨロシ:幸せで喜ばしい様を指すものと思われる
・シラヤマヒメ:アワナギの子であり、イサナギの兄妹。死後はシラヤマカミと称えられる
・アマノハラ:複数の意味があり、ここでは"アマテルを孕んだ地"を指す

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原文(漢字読み下し)

・二十一鈴(ふそひすす) 百二十五枝(ももふそゐゑた)
・年(とし)キシヱ 初日(はつひ)ほのほの
・出(い)つる時(とき) 共(とも)に生(あ)れます
・御形(みかたち)の 円(まとか)の保籠(たまこ)
・訝(いふ)かしや

・大老翁(うをやをきな)の
・ヤマスミか 寿(ことほ)き歌(うた)ふ
・むへなるや 幸(ゆき)の喜(よろし)も
・御代嗣(みよつき)も 弥々(よよ)の幸(さいわひ)
・開(ひら)けりと 栄(おほ)よ優(か)らに
・寿(ことふ)くも 三度(みたひ)に及(およ)ふ
・幸喜(ゆきよろし)

・人(ひと)の問(と)わしの
・答(こた)ゑにも トヨケの尊(かみ)の
・教(をし)ゑあり 障(さわ)るイソラの
・禊(みそぎ)にて 胞衣(えな)の囲(かこ)みは
・オノコロの 尊籠(たまこ)と成(な)らは
・幸喜(ゆきよろし)

・尊(たま)の結戸(いわと)を
・開(ひら)らけとて 一位(いちゐ)の木(はな)の
・笏(さく)もちて 今(いま)こそ開(ひら)く
・天地(あま)の戸(と)や

・出(い)つる若日(わかひ)の
・輝(かかや)きて シラヤマ姫(ひめ)は
・産湯(うふゆ)成(な)す アカヒコ桑(くわ)に
・引(ひ)く糸(いと)を ナツメが織(お)りて
・生絹(うふきぬ)の 御衣(みは)奉(たてまつ)る

・タラチメの 疲(つか)れに乳汁(ちしる)
・細(ほそ)けれは 補飯(ほいゐ)の守(かみ)の
・御乳(みち)つ侍女(ひめ) 乳(ちち)奉(たてまつ)り
・養(ひた)すれと 瞳(ひとみ)を閉(と)ちて
・月日(つきひ)無(な)や

・やや初秋(はつあき)の
・望(もち)の日(ひ)に 開(ひら)く瞳(ひとみ)の
・初(しほ)の見(め)は 民(たみ)の跳(てふ)ちの
・喜(よろこ)ひに 疲(つか)れも消(き)ゆる
・御恵(みめく)みや

・天(あめ)にたなひく
・白雲(しらくも)の 架(か)かる八峰(やみね)の
・降(ふ)る霰(あられ) 弥州(ひすみ)に反響(こたま)
・この瑞(みつ)を 布(ぬの)もて作(つく)る
・八豊幡(やとよはた) 八隅(やすみ)に立(た)てて
・君(きみ)となる

・位(くらゐ)の山(やま)の
・一位笏(いちゐさく) 世(よ)に永(なか)らゑて
・笏(さく)持(も)つは 尊(かみ)の穂末(ほすゑ)そ

・叔母姫(おはひめ)か 越根(こゑね)の国(くに)に
・御衣(みは)織(お)りて 奉(たてまつ)る時(とき)
・泣(な)く御子(みこ)の 声(こえ)聞(き)き取(と)れは
・あな嬉(うれ)し これより諸(もろ)か
・名(な)を請(こ)ひて 叔母(おは)より問(と)えは
・ウヒルキと 自(みつか)ら答(こた)ふ

・御子(みこ)の声(こえ) 聞(き)き切(き)る時(とき)は
・幼名(おさなな)の ウは大(おお)いなり
・ヒは日(ひ)の輪(わ) ルは陽(ひ)の精霊(ちまた)
・キは熟(きね)そ 故(かれ)太陽霊貴(うひるき)の
・尊(かみ)なり キネは女男(めを)の
・男(を)の君(きみ)そ 二尊(ふたかみ)叔母(おは)を
・称(たた)えます キクキリ姫(ひめ)も
・あな畏(かしこ)かな

・天(あ)か球(たま)の 若日(わかひる)の霊(る)は
・青(あお)き霊(たま) 暮日(くれひ)の神霊(みたま)
・萎霊(ぬはたま)なりき

・久方(ひさかた)の 光(ひかり)生(あ)れます
・初嘗会(ういなめゑ) 天(あ)ユキ・地(わ)スキに
・付(つ)け祭(まつ)り 御子(みこ)養(ひた)さんと
・二尊(ふたかみ)の 実心(みこころ)つくす
・天(あま)のハラ 十六年(そむほ)居(ゐ)ますも
・一日(ひとひ)とそ 思(おほ)すは恵(めく)み
・篤(あつ)きなり

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現代語訳文の目的・留意点

・この現代語訳は、内容の理解を目的としています
・原文を現代語で理解できるようにするために、原文を現代語に訳して箇条書きで表記しています
・原文や用語の意味などについては「ほつまつたゑ 解読ガイド」をベースにしています
・原文に沿った翻訳を心がけていますが、他の訳文と異なる場合があります(現代語訳の一つと思ってください)
・文献独自の概念に関してはカタカナで表記し、その意味を()か用語解説にて説明しています
・()で囲んだ神名は、その神の別名とされるものです
・()で囲んだ文章は原文には無いものですが、内容を理解し易いように敢えて書き加えています
・人物名や固有名詞、重要な名詞については太字で表記しています
・類似する神名を区別するため、一部の神名を色分けして表記しています
・サブタイトルについては独自に名付けたものであり、原文には無いものです
・原文は訳文との比較の為に載せています(なお、原文には漢字はありません)
・予告なく内容を更新する場合があります